綯綯

ミッドサマーの綯綯のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.5



「彼らなりの、ちょっとムリな形の愛情」



きれいだけど不気味ってみんな言うからもっと奥ゆかしいのかと思ったら、全然。ポルノくらい直接的なヒューマンホラー。

美しさの皮をかぶった変態映画。

可憐なデザイン、緻密なカメラワーク。明確に織り込まれた不協和音と異常描写。絵画みたいだね。

花の道、祝福。

華やかさと超現実性についてはアナイアレーションみたいなところがある。割とバッド入ったまま不思議の国のアリスみたらこうなりそうみたいな筋書き。ラスト30分は隠すつもりなし。

おばちゃんが腰押して手伝ってくれるのはさすがに笑ったけど、老婆の裸を描くのって見たいものを見せるエンタメではなかなか扱えないものがある。

死は救済であり他者は自己。死刑制度とか相互扶助とか、社会的理由のある殺しとセックス。小さなコミューンは感情や痛み、死生観すら共有する家族共同体になった。
(これは主人公が狂乱のなかでふいに感じる肉親の死と家族愛の欠乏あたりに繋がる)

そんな彼らにとって主人公へのもてなしは真心からくる行為なのに、どこかムリなタイプの愛情を受けたときみたいな苦笑がある。ミッドサマーの薄気味悪さとは、すなわち僕らの心に巣食った無碍な利己主義なんだ。

それ自体について、彼らの行為が必要かつ理解してあげるべきものだと思えば何か筋通ってそうだけど、これを共感するのは致命的。外界からはとても理解できなさそうな、共感してしまうとこっちの倫理観が色あせてしまいそうな恐怖がまたよい。ダンスステキ〜とかパタパタかわいい〜という感情はすでに敷居に足をかけている。端々に美しいよな〜って感じるところがすでにドープの片鱗を見せている。

だけど家族を失った主人公にとって、コミューンは自らを受け入れてくれる共同体で。心の付け根がゆるゆるの彼氏や倫理のタガがばかになってる友達を焚き上げてもおつりが来るほど待ち望んだ存在、まぎれもなく家族なのだ。はぴはぴ闇落ちエンド。

めでたしめでたし。