April01

ミッドサマーのApril01のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.6
太陽の光輝く牧歌的で色彩豊かな明るさと対比させてストーリーを進めることが目的だと思うのだけど、先が読めすぎてしまい、あまり驚きがなく対比と感じられない。最初から最後まで不気味だし、スウェーデンに場所を移してからの作為的な明るさがむしろあからさまに不自然なので。
残酷という意味でのショックはあるものの、そうなるか!という驚きが全然ない。なるべくしてなったとしか思えないリアリストな自分が可哀想になる。

ショックを与えようと念入りに作りこんだであろう老人のエピソード、あれ絶対にわかるように作ってるし、そうなると思わなかった!なんて人いるのかな。崖を見せた時点でもうね。
そこから驚きに持っていきたい作り方が、わかってるよね、でも見ようねと言われてるようで胸糞悪く、すごい忍耐を強いられまして。悲鳴なんかもう自分の中ではとっくに上がってたわけで。
え?そこで?遅いよと思い笑ってしまう。
叫んだり怒ったり吐いたりして正義ぶっても、起きるの知ってて見てたよね!という突っ込みを入れたくなる。

そういう作ってるな~という感心ゆえにスゴイ!とも思える。
この作品の特異さは、来るとわからせつつ実際に来る、その過程を見守る厭らしさというか気持ち悪いことに対する好奇心、言葉にしたらいけないような心の奥底にある悪意、それが起きることを知っているでしょ、傍観者だよという風に見せつけてくる物凄い気色悪さ。

ジャック・レイナー演じるクリスチャンの瞳がこの役にピッタリ。プリクラで加工するとこうなるよねっていうキラキラパッチリウルウルに変化してる気がして、あれ?途中からこうなった?それとも元々だっけ?と状況と共に追い詰められる困り顔の作り方が上手で感心する。

ここは違うな、と思った箇所は1つだけ、一連の行為の中でのキス。偽りでもいいから愛の形にしたかったのかどうか、女は応えただけのようにも見えるし、むしろ気持ちを高めないと出来ないのは能動的にしなければならない男の側であるゆえに、監督さん男だし、正直な描き方なのかもしれない。
ドラッグ使ってるんだから余裕でしょ、そんな女々しいことしてないで一気に進めば!って思っちゃった自分に苦笑。一瞬のアレさえなければ、あの場面はカルト的儀式として文句なかったんだけど。

自分が物凄く怖く感じた場面が1つだけある。それはダニーの夢の中。仲間が去るところ。予測できなかった事態だけに心の底から怖かった。ダニーの深層心理に潜む恐怖、孤独、依存、不安、不信などの複合的な闇を描いた素晴らしい場面だと思う。置いていかれる恐怖心を共有したしダニーへのシンパシーを感じたからこそ、あそこで起きることを忍耐強く見守る傍観者であり続けることができた気もする。

彼女が救われ家族もできて幸せであれば1つの彷徨える魂の救いには違いない。入ってしまえば楽、その快感と安心、ペレが言うところのまさしく守られてる感、そういうまやかしを芸術的な映像で昇華。だからこその嫌悪感でもあるわけで。そんなうまく作らないで!っていう。可愛い衣装や花冠で飾って美しい!ゆえにあざとい!
April01

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