タイレンジャー

ミッドサマーのタイレンジャーのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.9
2019年公開作品ベストワンは本作でほぼ確定。

エログロ描写がドギツイのですが、同時にこれほど心が満たされた映画も久しぶりなのです。

①表面的な作品評価

牧歌的な美しい農村の奇祭に足を運んだ若者たちが次々と血祭りに遭うという話です。

メルヘンチックと言ってもいいくらい明るく純朴な美しい映像と、観客の心を激しく揺さぶるグログロ展開のギャップがすごいです。

アリ・アスター監督の前作『ヘレディタリー/継承』が漆黒の闇のイメージが強かったのに対し、今回は光に包まれたお花畑ホラーです。

そして、恐ろしく作品の完成度が高いですね。2回目に観たときに細かい伏線(と言うか、暗示)の発見の数々に「あーっ!」となります。それだけ非常によく作り込まれているんですよ。

②作り手が意図した裏テーマ

監督自身が語るように「失恋映画」でもありますね。

主人公カップルの関係性は冒頭から要注目です。彼女の気持ちを汲み取れない彼氏の至らなさがこれでもかと描かれていて、男性諸氏にとってはありがたい反面教師ですわ。

恐らくは監督自身が本作の彼氏のように「至らなかった」結果、失恋したということかなり自虐的に描いているように思えるんですよね。

ただ、本当に失恋というテーマだけでここまで物語を発展させられるものでしょうか?さらなるテーマがありそうです。

③さらに深読み

それはきっと「宗教」でしょうね。

家族全員を亡くした主人公の心の拠り所は彼氏のみ。でも「至らぬ」彼氏は彼女の心に寄り添うことができない。

男性よりもコミュニケーションにおいて共感を重要視する女性にとっては、悲しい時に一緒に泣いてくれて、苦しい時に一緒に悶えてくれる存在が必要。

そんな共感力を武器に、村人たちは主人公を洗脳してきます。主人公が精神的に弱い状態であることをいいことに。

まるで不幸な人を巧妙に誘い込んで入信させる一部の宗教団体の手口のようです。

同時に、不幸な人が宗教にハマってしまったらなかなか抜け出せななくなる気持ちも分かってしまうのが本作の危険なことろ。

喪失した人にとっては「皆が助け合い、調和の中で生きている」コミューンはどうしても良く見えてしまいますから。

「ここが私の居場所なんだ」と信じさせる手口は恐ろしくもあり、同時に、主人公が喪失の悲しみから解放されるのには感動すら覚えてしまうのです。

④注目してほしい点

・絵が出てきたら神経を集中させて観てください。必ずと言っていいほど、重要な意味や暗示が含まれています。

・映画館のスクリーンで観られることを想定した絵作りが多いので、画面上の小さな情報も多いです。ぜひ映画館で。

・『ベニスに死す』(1971)の美少年役、ビヨルン・アンデルセンが出演しています。あれから50年…
どんな役かは…知らないでおいたほうが良いでしょう(含み)。