朝田

ミッドサマーの朝田のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.9
先行上映にて鑑賞。鮮烈なゴア描写やシンメトリーの構図など「ヘレディタリー/継承」と共通する部分はありつつ、ホラー映画というジャンルから逸脱するようなアリ・アスターの作家性が炸裂する怪作。意表を突くようなリズム感のカット割や、カメラワークが到底怖いとは思えないような陽光に射された舞台に居心地の悪さを持続させている。基本的にワンカット、長回しでショットが積み重ねっていくからこそ、唐突にシーンが切り替わるようなリズムの異様さが際立つ。今作は王道のホラー映画としては作られてはいない。そのため幽霊のような直接的に恐ろしいものは画面に映らない。ジャンル映画的な大袈裟な恐怖演出も無い。にも関わらず、間違いなく今作は怖い。それは、「行動原理が不明な人間」を幽霊やモンスターの代わりに描いているからだ。その人たちにとっては至極当然の事が、第三者から見ると異常なものにしか映らない。そうした根源的な、人間という存在の危うさ、不気味さに今作はクローズアップしている。
「ヘレディタリー」でも顕著だったベルイマン・オマージュが前景化している(「イングマール」という名前の人物が登場するほど)。が、今作の、何一つ理解出来ないルールで動く人間たちの行動をひたすら見せられる感覚は黒沢清の「蛇の道」や「蜘蛛の瞳」を思いださせた。所謂ホラー映画的な派手な演出は無いため、前作以上に賛否両論であろうが、二作目にしてアリ・アスターの映画としか言いようがない独創性にたどり着いたセンスを圧倒的に支持したい。
朝田

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