平野レミゼラブル

ミッドサマーの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.4
(※2/3追記:本作の概要をコメント欄に邪悪に表現しました。普通にネタバレです)
(※2/4追記:⬆️の邪悪なネタバレと同じ呟き内容がフィルマ公式のモーメントにまとめられましたが、フィルマのがより精度の高い邪悪なネタバレをしているの笑うでしょ)

感想を書くにあたって、まず本作の公式Twitterを引用させてほしい。

『最新予告編完成🌻🌼🍷🌱🌞🌸🌼🌺🌻🌼🍷🌱🌞🔥💐🌸🌼🌺🌻🌼🍷🌱🌞🔥💐🌸🌼🌺🌻🌼🍷🌱🌞明るいことが、おそろしい― #フェスティバルスリラー 🔥💐🌸🌼🌺 #ミッドサマー 🌻🌼🍷🌱🌞🔥💐🌸🌼🌺🌻🌼🍷🌱🌞🔥💐🌼🍷🌱🌞🔥💐🌸🌼🌺🌻🌼
🌸🌼🌺🌻🗡️🍷🌱🌞🔥💐🌸🌼🌺🌻👩🏻‍🦰🍷🌱🌞🔥💐🌸🌼🌺 #祝祭がはじまる 💐🌸』

もう見るからにヤバイ。
ファンシーさを出すために多用する絵文字が、却って不穏さを漂わせ、しかも大量の花や太陽に混じって邪悪なものが混じっている。とりあえずなんだよ、この🗡️はよ!!
しかもその予告編が不協和音が混じる音楽、なんか明るすぎて不自然な背景、明らかに厄い儀式と観ているだけで不安になってくる。
ちなみに公式Twitterは万事がこの感じで一切ブレることがないため、個人的に『ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨン』の公式アカウント以来の「ホンモノ」の狂気を感じた。コワイ

まさに『ヘレディタリー』で「人を不安にさせる天才」、「純粋な狂気」、「本物の邪悪」と大絶賛(?)されたアリ・アスターに相応しい漏れ出す邪悪っぷり。そのあまりの濃度の邪悪さに当てられた自分は、公開を楽しみにしながらも戦々恐々とする日々を送っていた。ごめん嘘。楽しみの感情すら邪悪さに塗り潰されてたわ。試写会が決まってからというもの、その日が来ることに怯え、日々アリ・アスターを「見るからに邪悪」「目が暗く澱んでいる」「国外追放しろ」と罵り、「嫌だ!死にたくない…」と呟くことで心の平衡を保っていました。
試写会当日も「行きたくない!おうちかえる!!」とゴね、会場でこれからとても映画を観せる雰囲気ではない不穏なBGMをエンドレスで聴かされ、来場者プレゼントの絵葉書でバーニングする熊に困惑しながら、恐怖の上映会が始まったのですが………




観終わってすぐに、アリ・アスター監督をこれまで散々「邪悪」と罵ったことを真摯に反省したくなりました。アリ・アスター監督の根本は「苦しんでいる人を救いたい!」という善良なもので、とても慈悲深く、まあ確かにその行動の中に邪悪さは含まれるんだけれども、とにかくその邪悪さが人を救うこともある。その事実に感銘を受けました。
ただ、上映後のQ&Aで「本作の死を象徴する色は『青』と『黄』にしたんだ!そう、スウェーデンの国旗🇸🇪の色だね!!」と嬉々として語る姿は紛れもなく純度100%の邪悪でしかなかったので、スウェーデンで犯罪者として扱われればいいと思います。

・上映後のQ&Aで行われた印象的なやりとり
「死は救済ですか?」
「良い質問アリね〜!(ネタバレのため以下略)」

「監督はどのような死に方で死にたいですか?」
「火をつけられて焼け死ぬのも悪くない気がするアスターよ!」
(訳註:非常に陰惨な発言内容のため、語尾を和やかにしました🌞)


本作はクライマックスから物語を逆算して構成したとあって、カタルシスがとんでもないことになっているんですよ!!あまりの思い切りの良さに、一瞬唖然としてその後は大爆笑していました。『ヘレディタリー』も終盤あまりの思い切りの良さが逆にギャグと感じてしまい笑ってしまったのだけれども、こちらは本当に監督の意図する通りの開放感故の笑い。
アプローチは同じなんだけど、結末をこれ以上なくポジティブに振り切っている辺り『ヘレディタリー』とは対になる映画かもしれない。

前半こそ、前作同様に不穏さを煽るBGM、村人たちの異様な行動、花が膨らんだり謎のゆらぎが発生するなどのさりげない視覚効果、夏至で常に画面が明るいから彩度クッキリ映るグロ画像で精神を落ち着かなくさせてきて「アリ・アスター、テメェー何やらかしてくるんだコノヤロー!!」とキレビビり散らかしていたのですが、これでストレスを溜めまくったからこそラストでこれら全てが爽快感に変換されるんですね。
アリ・アスター監督も「人を不安にさせる天才」と恐れられていることは折り込み済みなのか「どうせコイツらが酷い目に遭うのわかってんだろ?」とばかりに、もはや直喩レベルの絵画などを配置してこの後に巻き起こる惨劇を予告。画面が明るいからこそ逃れられない光景が次々提示されてくるという。この人、恐怖演出のレパートリーどんだけあるの!?

幻想的かつ牧歌的…な筈なのに何もかもが不気味な舞台「ホルガ村」の造形はなにもかも素晴らしい。綺麗と邪悪が混在する場所ってなんなんだよって感じです。でも、神聖なる夏至祭をあんなにした監督はスウェーデンから一生入国拒否されればいいと思う。

演者も素晴らしく、特にホルガ村の住民なんてよくもまあ、あんなに胡散臭いのを集めたもんだと感心する。あと、大学生一行を村に誘ったペレくんは、ほぼアリ・アスター監督のアバターの如き存在で、常に邪悪かつ慈悲深い行動を取っているのが最高。「ペレ=アリ・アスター」に関してはQ&Aで問い詰めたかったけど、選ばれませんでした。残念。
まあでも、MVPはなんといっても主演のフローレンス・ピュー。精神的に不安定で危なっかしいし常に怯えてるんだけど、徐々に解放されていく女性をチャーミングさも失わないまま演じ切っていたのが良かったです。ただ、彼女は本作のあの衝撃のクライマックスの直後に『若草物語』の撮影に向かったらしいんだけど、それを知った俺は明日どういう気持ちで『若草物語』を観ればいいんでしょうか?彼女が何をやっても「ああ…ミッドサマーのアレをやった直後の演技なんだな」ってなって集中できないよ……

まとめると、登場人物の感情にリンクさせた上で最終的に振り切ってスッキリさせるセラピー映画です。辛い時はみんなで泣き叫んでスッキリしましょうっていうのあるじゃないですか。それです。
『ミッドサマー』観た人みんなが「スッキリした!」って言ってるのを見た時には、「コイツら頭アリ・アスターにされてるよォ…怖いよォ…」って泣いてたんですが、いやまあ…実際に「スッキリした!」ね……
ただまあ監督曰く「何日か経つとドロドロとした感情が湧き上がって印象が変わるかも」とも言ってるのでね。また数日後にはアリ・アスター監督のこと罵ってるかもしれません。


ネタバレ厳禁な作品なんで語れることはここまでなんだけども、例によって二度観ることでわかる(もしくは印象の変わる)伏線・布石・演出も盛り沢山なため、僕は友達誘ってもう1回観に行きますよ。特に試写会参加者にだけ教えてもらった「まだ誰にも気付かれてない秘密の仕掛け」をこっそり教えてもらっちゃったんでね……オフレコなんで教えられませんがね、となんかマウントを取っていくスタンス。

あと、本作これから観る人への注意喚起もしておきますが、飲食しながらの鑑賞は全くオススメできません。「飲」すらダメです。コラボドリンク提供している店がありますけど、その店は紛れもない邪悪です。飲まず食わずで臨みましょう。
カップルで観ることもオススメできません。むしろ法律で禁じるべきです。最悪の場合、どちらか片割れが殺人罪で捕まるし、アリ・アスター監督にも殺人教唆が適用されます。『ロボゲイシャ』は「ギリギリ・デートに使える映画」ですが、『ミッドサマー』は「カップルの命は保証しない映画」です。これから誘う友達は去年のうちに別れてくれていて助かった〜〜〜。

超絶オススメ!!