茶一郎

ミッドサマーの茶一郎のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.2
 地獄の数は多い方が良いし、地獄の時間は長ければ長い分だけ良いという事がよく分かる最悪な映画『ミッドサマー』。
 前作『ヘレディタリー/継承』がオカルトホラーと地獄のホームドラマのジャンルミックスだとすると本作は、民俗ホラーと地獄のラブストーリーのジャンル闇鍋。監督曰く「これはホラーじゃなくて恋愛についてのファンタジーだよ」という事ですが、泣きながら頷くしかありません。

 ほとんど部屋の中で終わった前作が嘘のように明るく開放的な舞台、しかし明るければ良い物でもなく明るいからこそ「見えてしまう」ものがあるという、この地獄。
 ベルイマン好きの監督が北欧を舞台にするという事は……(イングマールという登場人物が!)と思いきや、同じスウェーデンでもどちらかというと奥行の使い方はロイ・アンダーソンで、『黒水仙』とセルゲイ・パラジャーノフが元ネタという美しい美術と衣装は必見です。

 何でもかんでもジャンルをミックスすれば良いものではないですが、その素材それぞれを格段に美味しくするアイディアと思い切りは素晴らしい。付き合って長いカップルこそ見るべき映画です。
茶一郎

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