マツシマ

ミッドサマーのマツシマのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.9
明るく鮮明で清らかな

地獄!!!!!


ある日あまりに残酷な形で家族を失った女子大学生のダニーは、ただでさえ依存気味だった彼氏のクリスチャンに超依存
クリスチャンはクリスチャンでもう一年は前から彼女を重い重い…と感じていたが、優しいのか悪者になりたくないのかとりあえず付き合っているのだった

そんなある日クリスチャンは大学の友人からスウェーデンの実家の夏至祭に行かないかと誘われる
大学の研究も兼ねての旅行だったが、彼女を置いて行くのも気まずい気まず過ぎる……ということで
みんなでお出かけを決意

ようこそホルガ村へ!!!


疲れた……
これマジで二時間半くらいしかないの?
6時間じゃなくて?
いや、4日間じゃなくて?
て思うくらい濃密

冒頭からずっっっっっと不穏
画面の端々や、効果音、BGMから漂う不穏不穏不穏に次ぐ不穏

いや、明るいしお花も咲いてるし村民ニコニコしてるし
なのにずっっっっっと不穏

この後何か不吉なことが起こるに違いない(そしてその不吉なことは、既に画面のどこかに描かれている。壁画やモニュメントやあるいは読めない文字によって)という嫌な感じが延々と付き纏い、とにもかくにも疲労する

主人公のダニーの精神疾患の発作描写は、実に辛くて
過去に不安障害やパニック障害などの精神疾患を患った人間ならフラッシュバックして発作を起こすのではないか?というほど上手く描かれていた
現に私は少し発作が出かけました
映画でそんな目に遭うなんて、とんでもない
それだけでこの映画は「鑑賞」というより「体験」に近い接し方をしてくることが分かります

奇妙かつ不穏かつ血なまぐさい風習がオンパレードのホルガ村ですが、
外部から見れば地獄でも
内部から見れば天国かも知れません

それは「家族」を喪ったダニーが、この共同体に熱烈に望まれることで、1つの救済を感じることで描かれます

見る位置によっては拷問のような映画ですが、やはり位置によってはカタルシス、浄化の映画であるとも捉えられるのです


とまぁ散々不穏なことばかり煽りましたが、実はこの映画かなり面白い部分もあって
10回近くは笑いかけましたし、実際何回も笑いが吹き出しました
決して笑かせにかかってはいないんですが、大真面目にやってる分「アホか!!!!!!」とツッコミたくなるシーンは多々あります

アリ・アスター、コメディ撮ったら死ぬほど面白いのでは???


「嫌さ」の最大瞬間風速は「ヘレディタリー」に譲りますが、終始嫌な空気が漂う点で「嫌さ」の総量は「ヘレディタリー」の倍くらいあった気がします

あ、これホラー映画ではないです
そして思い切りカルト映画です
全国のシネコンでやってるのが不思議なくらい
「風立ちぬ」もそうだったけど、何かの間違いでカルト映画を皆が観てしまう現象、本当に面白い


アリ・アスターは老婆の裸をちゃんと描くのが素晴らしいな
しみじみ