ともさんfromヒスパニ

ミッドサマーのともさんfromヒスパニのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます


「 ミッドサマー 」鑑賞の為、2月で都合4度目の劇場へ。

近年稀に見るホラー豊作月間、嬉しいっすね。



この作品の存在を知った段階では まず第一印象として作風的に自分には余り刺さらないであろうと感じたので、まぁ公開期間中に行けたら行こうかな〜 くらいのレベルでした。

が しかし、ホラー豊作月間にも関わらず( 前回までのスコアの通り )個人的に残念な作品が続いていた上、

公開直後からSNSで「 ミッドサマー 」の話題で持ち切りになっていた事もあり、公開3日目の2月24日 予定を大幅に繰り上げて急遽 劇場へ。



なるべく事前情報を入れず、なんだったら予告編すらマトモに見ないような状態で自分は行ったんですけど、結果的にはそれが吉と出た気がします。

なので まだ観ていない方はネタバレ注意、この先は自己判断で。










このFilmarksのアカウントを作っておいて言うのもなんですが、基本的に上映時間が長い映画って苦手なんですね。俺。


作品を選ぶ時に、120分以内で収まるか否かと言うのを1つの判断基準にしているくらいで、

それ以上だと飽きてくると言うか、ダレてくると言うか、自分の集中力が切れて純粋に楽しめなくなってしまう事が多いと言うか。。。


そう言った意味でも平均90分〜100分ほどでサクッと完結するホラー映画が自分には性に合っていて好きなんですよね。





そしてこの「 ミッドサマー 」は上映時間が148分。凡そ2時間半。

自分の中では久々の長編大作扱いだったので、体調を整え 万全の状態で鑑賞に臨んだ訳なんですが、結論から言ってしまえばそれはただの杞憂に過ぎませんでした。


事前情報無しだったのも手伝って、物語が進むにつれ加速していく得体の知れないムードに「 次は何が起こるんだろう? 」の連続。

無駄な長さも感じさせない没入感の高さで 次第にその世界観へのめり込んでいきます。


その時点でもう大前提として面白い映画であった事は言わずもがな、なんですけれども。

( ちなみにディレクターズ・カット版は171分、ファースト・カットでは225分も有ったらしい… それは流石にしんどい… )










そもそもこの「 ミッドサマー 」はホラー映画なのか否か。


アリ・アスター監督自身はそう形容されるのを否定しているみたいだけど、一応ジャンル的には「 フォークホラー 」と言うものに分類されるらしい(公式HPより抜粋)(ホラーやんけ)


確かに、男女混合の大学生グループが旅の途中で軽率にドラッグをキメつつ、見知らぬ土地で謎の原住民たちからの洗礼を受け、知らぬ間に1人 また1人と消えていく…

と言った粗筋だけを取って見れば 超ベタと言っていいほど古典的ホラー映画のルールに則っているんですよね。



基本型こそ同じなのに、一切その「 らしさ 」を感じさせないのは 何と言っても「 画面の圧倒的な白さ 」に他ならないんじゃないでしょうか。


ホラーをホラーたらしめるものって何時 何処から 何が襲ってくるか分からない「 夜 」や「 暗闇 」に付随する恐怖感だと思うんですけど、「 ミッドサマー 」にはそれが全くと言って良いほど無いんですよね。


それどころか それとは全くの正反対。

視界良好、見晴らしの良いロケーションで大勢の人々が集い、挙句 陽気に歌い 踊っているんだから。

マジ平和。


それなのに作品全体を覆う、狂気を孕んだような独特の嫌〜な雰囲気。

その絶妙な「 ズレ感 」が逆に気持ち悪さを生み出しているんですよね。


モチロン要所要所で多用される不協和音的なSEだったり 特殊なカメラワークなんかも然る事ながら、劇中の「 白夜 」と言う設定がまた更にその異様さを演出するのに一役買っていて、なるほどなーと思いました。





中には過激なスプラッター描写、所謂カルト的な奇習の不気味さも多分に有るんだけど、

それすら画面全体に広がる大自然や村の建造物、女性たちの華やかな衣装などが織り成す彩り豊かなビジュアル効果によって良い意味で全て霞んでしまうんですよね。


またそのゴア描写のクオリティもイチイチ高く、「 …あれ?ホルガ村ってレクター博士も住んでるんだっけ? 」と錯覚するほどには死体の造形までもが美しくて。( 特に最後の鶏小屋のシーンとか )

個人的に前回観たのが「 犬鳴村 」のオモチャみたいな死体だったので、これにはスプラッター好きも思わずニッコリ。





この作品を語る上で特筆すべきはやはりその「 映像美 」やら「 美術センス 」だと思うんですが、

鑑賞中、「 何処かでこれに似た感覚を味わった事が有るぞ…?? 」と、ずっと謎の既視感に苛まれていて。


それが後に「 時計じかけのオレンジ 」を最初に観た時の感覚にとても近い事に気付いたんですね。


過激な暴力描写や性描写なんかは有るんだけれど、そのバイオレンスさが圧倒的な美術センスで中和された結果 全体として何処かアーティスティックに見えてしまう… みたいな。


それぞれ作品としてのベクトルは全然違うんだけど、カルト的な世界観も親和性が高いなと個人的には。





そんなこんなで気付けば2時間半。


問題のラストシーンですが、爽快感のようなカタルシスを感じる人も居れば、中にはバッドエンド的な胸糞と感じる人も居るそうで、

人それぞれに捉え方が異なり それもまた考察の余地を含んでいて面白いなぁと思うんですが、個人的にこの作品から学んだ事と言えば詰まるところ これに全て集約されるなと思いました。



「 結論:メンヘラを怒らせると燃やされる 」















個人的に面白かった作品には少しでもお金を還元したい!と言うヲタク心から 毎回必ず何かしら物販を買うようにしているんですが、

今や品薄らしい「 ミッドサマー 」のパンフレットは買って大正解でした。

作中の聖書を模した装丁も可愛いし、読み物としても面白い。


作品の中では直接的に語られなかった部分まで補完してくれるので、観賞後のモヤモヤもスッキリ。

( 公式HPにも一部パンフと同じ内容のネタバレ完全解析が有るので見終わった人はそちらも目を通すとまた面白いですよ )


それを踏まえた上で、久々に2回目が観たくなった作品に出逢えたような気がします。

今週末からディレクターズ・カット版が公開されるんですけど、上映時間が3時間弱と聞いて迷っている所。。。













・・・・・・・・余談・・・・・・・・


「 観たら死ぬ 」との謳い文句でバズった「 アントラム 」と時を同じくして、

制作会社が「 この作品が原因で別れたカップルに3ヶ月間無料のセラピーを提供する 」と謳った事で話題になったこの「 ミッドサマー 」ですが、

まぁ確かにわざわざカップルで観に行くような作品ではないなと。



ただ奇しくも今回 足を運んだ劇場で自分の後列に座っていたのが若いカップルでして、

上映中やたらとああでもないこうでもないと2人で喋っていて個人的にそれがとても気に入らなかったので、

どうか彼らがこの作品が持つ不思議なパワーによって今頃は破局していますように、と願って止みません。


がんばれ!!ミッドサマー!!