ピロシキ

ミッドサマーのピロシキのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.2
レイトショーで2時間半というのは、しばしば「眠気との挑戦」という裏のテーマを抱えているものだが、ミッドサマーに関しては、ギンギンであった。もはや、ウトウトするタイミングがどこにもなかった。悲劇・号泣・豪雪のオープニング・クレジットに、ハクサン・クロークの音楽が唸りを上げるあの瞬間に、鳥肌が立ってしまったものは仕方ない。

この物語に存在するのは「異常であることが正常だ」という、植え付けである。視覚的にドギツくてボカシも満載だったけど、「これはエロ・グロなんかではありませ〜ん。これが自然なので〜す」という雰囲気に、まんまと乗せられてしまった。この時点でもう、何が起きても平気、の境地に達してしまった。

スウェーデンといえば、アリ・アスター監督も敬愛するイングマール・ベルイマンが出てくるだろうけど(イングマールという名の人物も登場するほどに)、「ミッドサマー」にはラース・フォン・トリアーの過去作品の要素が多く詰まっていた気がする。家族の喪失に精神を病む主人公は「アンチクライスト」、病んでいる人のほうが非常事態において落ち着きを取り戻していくという展開は「メランコリア」、そして、例のラストは「ドッグヴィル」という具合に、である。そう考えれば、あの終幕に「後味の悪さ」を感じるべきではないのかもしれない。

「変な映画だった」などという気はない。むしろ、コロナウイルスにも屈せず、わざわざ映画館までこんな映画をひとりで観に行った自分の方がよほど変である。そして、そんな自分を1ミリも恥じていない。笑え、笑え。
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