Ninico

ミッドサマーのNinicoのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.6
 彼らは仲間で一つで、『私』が無い。
憑依するように隣の仲間の感情を吸い取る。
子孫繁栄のために外部の人間をコミューンに取り込むが、精子を奪ったらあとは用無し。
独自のロジックでコミューンのために仲間を次々に殺す。
強固な連帯感から奏でられる共鳴の倍音は『滅私』の空虚さを際立たせる。

 最も印象的なシーンは、キメキメで最後まで踊り抜いた人が勝ちという、メイポールのダンスコンペティションのシーン。
刹那的な愉しさと、不穏な予感をないまぜにした情景が、民族的なリズムに乗せられ幽玄に映像化されていた。

---------ここから先はネタバレを含みます-----------

『このゲームに勝ったらダニー帰れなくなってしまうんじゃないか?』というこちらの心配を超えて、なんとダニーはコミューンの女王様に仕立てあげられてしまった。
 しかも、この子は心が弱いから抗わない。
集団に受け入れられ、認められ、崇め奉られ、その気になったんだか、キマリ続けてるんだか…。抵抗せず、皆から「あなたは女王よ」と言われて、なんとなく儀式の全てに応じてしまう。
そして、最終的には忌み嫌っていたコミュニティのまんなかで、最も拒絶していた殺戮を前に、醜い笑顔を見せることになる。

ダニーは自分を受け入れてくれた恋人に依存していただけであり、愛してなんかいなかった。ほかの自分を受け入れてくれる人達に囲まれて、恋人の裏切り行為を知ったら、迷わず彼氏を殺してしまった。
(実際は薬を盛られていたせいもあるが問答無用で殺した。)

 自分しか愛さない人が、どんな存在に映るかがよく描かれている。
自分たちと違うものへの想像力や理解を放棄して、閉鎖的な価値観に帰依する自己肯定感を頼りに生きている人々。
すぐ、身近にもこういう人達がいるからこそ、この映画は味わい深い。