故ラチェットスタンク

ミッドサマーの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.0
「フーハー」

例のアレのお陰でかなり遅れたけれどもやっと鑑賞

ラストシーンでかなり胸が不快になったけど、ストーリーの展開がしっかり分かると割とスッキリする映画

アリ・アスター監督の2作目であり、終盤にかけてカルト色が爆発した前作「ヘレディタリー 継承」と比べ今作は初めから終わりまでカルト色強めの作風となっています。

作家性とメッセージ性が前面に押し出されている今作は結果としてやや押し付けがましく、娯楽性には欠ける作品となっていました。
「ヘレディタリー」のオカルト要素が大好きだった人とかは、この映画を好きになれると思います。

それ以外の人だと、変わった映画も好きって人なら好きになれる作品だと思います。

大衆ウケは結構しづらいと思います。前作のような息がつまるような緊張感や舌打ちのたった一音に心臓を止められそうにそうになるような場面は一切ないです。

どちらかって言うとこみ上げて来るような来ないようなほのかな緊張感が全編に渡ってあるような作品でした。

ホルガという小さな村に住む人たちがいわゆるカルト集団なのですが、その風習や規則の内容が非常に関心を向けられるものでした。
世界観が非常にユニークかつ信憑性のある作りで素晴らしかったです。

よくわからない設定の説明を適度に説明してくれるし、説明しなくて良いとこはちゃんと省いて視覚的に魅せているのも好感が持てました。

文化や風習がぶっ飛び過ぎてて恐怖を感じたり、訳を聞くと理解できなくもない考えで少し納得がいったり、シュール過ぎてギャグっぽくなったシーンもあり色んな感情を突かれる映画でした。

村に入った最初から最後まで終始興味を惹かれ、設定にのめり込んで観てしまいました。

節々で退屈に感じたところはあったもののペースがスローな作品で2時間半という尺の中で酷く退屈した場面は一度もなかったです。

カメラワーク、カット割り、フレーミング、編集、撮影などの映像表現は非常に美しく画一枚一枚に魅入ってしまう事が多かったです。黄色と青を中心に色々な色が鮮やかに華やかにカラフルに使われていて色使いも上品でした。
ひとつの場所を起点として場所を変える演出が非常にユニークで、それ以外にも視覚的に面白い演出が多かったです。

セットやキャラクターの動かし方もユニークであり、演出が何から何まで新鮮な作品でした。

不気味さを掻き立てる音楽や音響、ビジュアル、デザインも素晴らしく視覚的に明るい中で非常に緊張感を煽っていました。

凄く不気味な人やセックスシーン、人体破壊などがあり、生理的に気色が悪く映るビジュアルを駆使し、音で驚かす事なく素晴らしい不快感を作り上げていました。

キャラクターそれぞれに人間味はあったし、演技も良かったです。主人公に焦点を当てつつもサブキャラにも適度にストーリーを与えていてそこのバランスのとり方も上手かったです。

悲しみ、絶望、失望とか色んな負の感情を溜め込んだダニーが儀式を通して段々と解放されて行く様には、狂気がありつつも同時にカタルシスがありました。

映画の持ち運ばれ方も良かったです。誰が死ぬかとかは分かりやすかったけどその後がどうなるのかはなかなか予想しづらかったです。

好きじゃなかった点をいくつか上げるとこの映画のスタイルではあると思うんだけど、やっぱり前作みたいな怖さは欲しかったです。

どちらかって言うと不快感が1番強く前に出てる感じ。

前作のような圧倒的で張り詰めた空気、緊迫、緊張、恐怖、不気味さ、を丁寧に積み重ねていった上で監督の作家性やら描きたいものを描いて欲しかったかな。ストーリーは詰まってるんだけどね。素晴らしい恐ろしさあってのホラー映画だと思うので。

あと主人公側のキャラクターのセリフが何箇所か余計に感じた部分があったのと、世界観に興味は引かれましたが最終的にはやや踏み込み足らずに感じました。

そしてモザイクが酷い。セックスシーンがあるんだけども、なんか最初は割とくっきり見せてたのに3回目映したぐらいで唐突にモザイクかけ出して、映画から気持ちが離れたし逆に下品になってた気がします。

全体的には好きでしたがホラー映画としては観ない方が良い映画かな。