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ミッドサマーのeyeのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.6
ミッドサマー(2020)

思い返すと『ミッドサマー』は
公開当時に異様にブレイクしてて

その後に完全版なるバージョンが公開された

個人的な感想は最後にして・・

この映画の特徴は何かの呪術を思わせる

「宗教儀式」

これこそが映画の肝になってると思う

劇中カルトの白装束集団には

「精霊信仰」

もあって土地や風習のルールを守らない人間は容赦ない厳罰が待っている

神聖な木に無自覚で立ちションして激怒されるシーンもその一つ

現代では考えが及ばないほどコミューンの中では "祈り" が中心になっている

土地・場所に宿る先祖代々の霊をなだめるために人間に処罰を下したり または犠牲にする

「生きた人間を火で燃やす」

のもその一つの "祈り" といえる

コミューンの生贄としての人間は
人生が4つの季節に区切られている

1~18歳は春
19~36歳は夏
36~54歳は秋
55~72歳は冬

その先は存在しない

72歳を迎えた老人が崖から飛び降りる

「アッテ・ストゥーパ」

もコミューンが形成したルールに従命している

飛び降りに失敗したあとの描写はなかなかな惨さがある

残酷・残忍な描写が取り沙汰されるけど
土着の民族性あるいは思想の始終を体験する映画だと思う

個々の価値観や考え方・意見を重んじる現代とは真逆の「風習」や「慣習」で形成される価値観

当然『近親相姦』もある中で生殖も「儀式」として捉えられる

『近親相姦』から誕生したメンバーに聖書の導きを任せているのもカルト集団の異様性を窺わせるポイント

自らが産み出したある種のシャーマンを
享受していることもまた異質な雰囲気を醸し出している

コミューンの通過儀礼として

ミートパイに陰毛が混入し食べさせることは相手に対し身体を許すサインでもあり

原始的な描写で何かに祈りながら貫通儀礼(性行為)を行ない受胎することがミッション

という点にはある種の"尊厳"を思わせる

ドラッグを常時使用して意識を変容させて正常の判断力をなくさせるのもまたカルト集団ならではの手法だとも思う

90年代に日本の歴史でも同じことをしていた宗教団体がいたのも思い出せる

そっちは洗脳が主ではあったけれど

そもそも論として宗教団体と一般市民では培っている価値観や概念が180度違うことで

それぞれの正義・立場は異なるということも教えられる

つまり一般的な考え方とは交われない

ストーリー中盤には天高く伸びるメイポールが登場して矢印の先端があって下には丸がついていて その周りを踊るコンペが始まる

まさしく男性器の象徴に対して祈っている

農作物・穀物の収穫・子孫繁栄の祈りから加持祈祷の姿はいかにも原始的な活動とも思える

『ミッドソンマルクランス』という花飾りと差し込む太陽がビジュアルをより際立たせてる

美術面ではおそらく類を見ないハイレベルなインパクトを残す映画だと思う

個人的な感想では

『ホラー』

というよりも宗教団体の始終を見せつけられ

「謎解き要素も多い映画」という印象だった

上映時間も長く観終わったあとに
けっこう疲れてしまった

呪術や儀礼・神話など考古学・宗教学の人には好物的な内容だろうけど

個人的にはエンターテイメントとして捉えるに辺り最後までどういうスタンスでいればいいのか分からず終いだった

考えさせるタイプの映画だけど
もう一回観るかと訊かれたら観ないかな
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