わたふぁ

さすらいの人 オスカー・ワイルドのわたふぁのレビュー・感想・評価

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「The Happy Prince (幸福の王子)」などで知られるアイルランドの文豪オスカー・ワイルドの主に晩年を描いた伝記映画。
なので、The Happy Princeという原題はちょっと不親切な気がする。王子と作者を重ね合わせているのはわかるけど。
幸福の王子の映画化だ!と一瞬期待してしまったではないか。邦題がついて日本人にはわかりやすくなりました。

オスカー・ワイルドはアイルランドで“国の宝”とも呼ばれた大作家でしたが、1900年頃の当時としてはスキャンダラスなことであった男色家で、それにより名声を失い、過去の輝かしい功績をよそに悲しい晩年を過ごしたようです。
確かに凡人には理解しがたい乱痴気騒ぎのような派手な遊びも好んだようだけど、映画には美青年に恋をする純粋なエモーショナルが繊細に表現されていて、それは単純に美しいものでした。

オスカー・ワイルドを演じるのは監督脚本主演を務めるルパート・エヴェレット。味のある声と風貌で、とても見応えのある役者さんという印象。詩人としても優れていたワイルドが遺した数々の詩を、彼のしゃがれた声で、渋い訛りで語られるシーンも良かったです。

コリン・ファースはワイルドのことをかばい続ける人物を演じています。あと、ワイルドの恋人役を演じたコリン・モーガンが美しかった。中性的だけどキリっと少し攻撃的な顔つきが魅力的でした。

列車の汽笛や車走音などを重要な場面のアクセントとして刺激的に使うなど、映像的なおもしろさもあり退屈しない伝記映画だったと思います。Wikipediaからはわかることのない彼の歴史の一部を知れた気がします。