ペコリンゴ

君の誕生日のペコリンゴのレビュー・感想・評価

君の誕生日(2018年製作の映画)
4.3
記録。
想いに救われる誕生日。

ソル・ギョングとチョン・ドヨンの共演ならば観ない選択肢は無いということで、重めのテーマにも臆せずチョイス。

ちなみに課金レンタルしたすぐ後にネトフリで配信来てちょっとしたショックに打ちひしがれるパターン。個人的あるあるです。悲しい…。

そんな小噺を前置きたくなるほどに辛い題材を真っ向から取り上げた初の映画である本作。その題材とは、未だ記憶に新しいセウォル号沈没事故だ。

予期せぬ事故で息子を亡くした遺族の喪失感が痛いくらい胸に刺さる。一歩踏み出そうとする夫と辛い現実から逃避しようとする妻の心は、何かが阻むように相容れない。傷は癒えるどころか広がるようですらある。

この辺りの心情描写が非常に丁寧で、主演2人の圧倒的な演技力に裏打ちされたリアリティは観るものの共感を否応にも誘い、目が離せない。

そんな中迎えるクライマックスはそりゃあもう涙が止まらない。この世に居ない者の生誕を祝う誕生日。矛盾するように聞こえるが、そんな事は無いのだと思い知る。そしてこれほどまでに心揺さぶられる。

同じ想いを共有する。
この恐らく唯一人類にのみなし得る行動は暖かい癒しを与え、これ以上無く心強い。

これぞ人間ドラマ。
いやぁ素晴らしい作品でした。