まりぃくりすてぃ

二人小町のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

二人小町(2020年製作の映画)
3.2
タイトな ファンタジー? ん……? チガウヨ。ユルめの メルヘン。

芥川龍之介の原作自体が、メンズの妄想思想を書き殴ってるだけの ショートショート(戯曲と呼ぶほどの仰々しさnothing)で、それを メンズなりの慎重さで メンズウケ するかんじに(低予算ながらそこそこ頑張れて)映像作品化してみたようね。

原作で、芥川先生は、「美女は地獄へ行くものだ」と勝手mix な思想を説いておられます。小野小町とか実在人物を浅ましい人間として ジタバタ させてるから散文的に オモシロ だけど、「女vs男。どっちが悪いか」の観念論で遊んじゃってる無邪気さに「所詮、芥川もただの男のコだもんね…」をみる。生理のたびに死にたくなっちゃうような私らの生臭い日常などに、しっかりめに無知だから。しっかりめに男思考だけで哲学してるから。時代の制約もあるのかな。
鳥居みゆきが「容姿なんて、魂がとりあえず入ってる箱」と発言したように、女性が魂の部分ファーストで何かやろうとしてる時に男性社会が勝手に女にのめり込みつつ勝手に女を悪いもん視してきた、そのへんに ムジャムジャ な無邪気さをみつつ、べつだん イライラ はせず私なんかもお話をお話として楽しむ。うん、いいショートショートだ。小野小町をちゃんと尊敬してる女性なんてあまりいないだろうし。

この映画に、清楚でお水っぽい端麗さのキャリアウーマンと可愛い麺屋店員という二人が同姓同名の「小町さん」として用意されてて、特に店員役の スリム なエリズ・ラオちゃんがすんごく愛され顔だった。そのエリズ・ラオが、後半、身勝手ちゃんへと チェンジした局面以降、(写真家専属モデルへとデコられてんのに)逆に全然映えなくなったのが、表現として ミラクル なかんじちょっとあった。キャリアウーマン側のハンナ・チャンのほうは、濡れ場でムネ見せ程度すれば映画的になったんだけど、TV的に、脱がずの内にとどまる。
にしても、上司に脱げと言われた女性が「泣く/従う」の二択しか探さないとか、死神に「妊娠中なら、命を助けてやる」と言われて必死に妊活し始めちゃうとか、道端で急に襲われて叫ばず暴れもせずやられっぱなすとか、もう、女の人の行動が全然 ファンタジー になってなくて メルヘン。
でも、そういった ユルサ が NG なのかといえば、ううん……OK め。あくまでもエリズ・ラオの可愛げや和泉素行のもたらす可笑しみに支えられての オモシロ だったけどね。
とにかく全体として ユル で ヌル な演出だけれど、そのことに慣れちゃった末の、終幕の コンパクト な噴出のかんじは、マリ好みの秀作映画『ゲロリスト』に通じる炸裂意思を持ってたりしたから、“磨かれてる認定” してあげてもいい。

あと、『カメラを止めるな!』の濱津隆之が(カメ止めの メガヒット 中にいろいろ協力してくれた)香港人たちへの最大 サービス としてあのお父さんそのまんまの風貌でカメオ。台詞も一つだけあるよ。(そんだけかよ。。)

ところで、地味汚い宣伝 ビジュアル の新作別映画『Shari』にちょっとだけ興味持って監督が吉開菜央さんって知って「あー、あの人か」って忌避、こっちの『二人小町』を吉祥寺で選んだんだけど、小町の片っぽのキャリアウーマン役のハンナ・チャンが私の去年みた菜央さん作品中の唯一評価できた短編『Grand Bouquet』の腹パンチにやられ続ける謎の無台詞主演女優だったと後でパンフ立ち読みして知った。菜央さんに私追いかけられたキブンだったけど、まあ、縁がなくないってことだね。
世界は、地続き。みんな兄弟姉妹。
仲良くしよっか。

芥川の最高傑作『藪の中』100点 ☞☞ 黒澤が映画化した何ともいえない迷作『羅生門』30点
芥川の楽しめる ヘン な佳作『二人小町』56点 ☞☞ 今回の映画化『二人小町』50点
セカイの クロサワ に勝っちゃってる本作ね。

芥川のもう一つの最高作『蜜柑』を、世界中のすべての映画監督(&監督志望者)全員に共通課題作として短編映画化させ、コンペして、そうして世界中から集まった同題名の全短編をみて上位500人以外の制作者たちに落第勧告し、上位100人にはじゃぶじゃぶと資金援助してあげてその人たちをさらに大きく育成したいもんだ。(きかんしゃトーマスの作り手たち、韓国勢、故人枠で強引に出場のキートン、とかがとっても張り切りそう。日本勢は慢心して誰一人10傑に入らず、、とか、なりそう。)
私がもしも『蜜柑』撮るとしたら、主人公を女性にして、那覇空港へ向かうモノレール(ゆいレール)内ってことにして、蜜柑の代わりに(タンカンでもいいけど)マンゴーかパパイヤか島バナナかドラゴンフルーツにする。
いかん、私が優勝しちゃう。。。

さて、秋に入って栗ラッシュ・柿ラッシュな毎日送ってきた私だけど、年末にかけてはケーキラッシュになってゆくんだろーなー。あらかじめ痩せなきゃ! 芋は敵?
この映画の帰り、PARCO内に最近出来た先手屋でふりかけのり子さんだけ買うつもりだったけど、生クリーム たっぷりのフルーツサンドの “焼き芋”と “マスカット” が欲しくなっちゃって、結局、“いちじく” 買った。んまかったー♪


▽付録▽
原作原案となった芥川の戯曲『二人小町』の一番 ヘン なとこ

黄泉の使い「しかし閻魔王の命令ですから、どうか一緒に来て下さい。何、地獄も考えるほど、悪い所ではありません。昔から名高い美人や才子はたいてい地獄へ行っています」
小野小町「あなたは鬼です」
   ……略……
(一層泣き声を立てながら)「わたしは黄泉の使いでも、もう少し優しいと思っていました」
黄泉の使い (迷惑そうに)「わたしはお助け申したいのですが、……」
小野小町 (生き返ったように顔を上げながら)「ではどうか助けて下さい。五年でも十年でもかまいません。
  ……後略