MasaichiYaguchi

盗まれたカラヴァッジョのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

盗まれたカラヴァッジョ(2018年製作の映画)
3.5
ロベルト・アンドー監督が1969年に実際に起きたカラヴァッジョの名画「キリスト降誕」盗難事件をモチーフにした本作では、この未解決事件の謎をサスペンスタッチで迫っていく。
未解決事件の謎に迫るというと名探偵物を思い浮かべてしまうが、本作はそういうアプローチの作品ではない。
勿論、そのような役割に近い謎の人物は登場するが、どちらかと言えば“狂言回し”的要素の方が強い。
本作ではストーリー展開と共に未解決事件を題材にした映画製作が並行して描かれてくる。
つまり作品そのものが「入れ子構造」になっていて、特に終盤ではどちらが“本編”なのか混乱してしまう。
ヒロインのヴァレリアは映画製作会社の秘書なのだが、もう1つの顔として人気脚本家のゴーストライターをしている。
そんなヴァレリアに元捜査官というラックという謎の男からカラヴァッジョの名画盗難事件に関する情報がもたらされたことから、事態は予想だにしない方向へ転がっていく。
このカラヴァッジョの名画盗難事件にはマフィアが関与しているとされているが、この闇の勢力を巻き込んで物語はスリリングに展開する。
果たしてヴァレリアもスタッフとして参加した映画は完成するのか、そして名画の行方は?
本作はカラヴァッジョの「キリスト降誕」を題材にしているが、美術の観点から名画に迫るものではなく、「入れ子構造」で描かれる映画製作現場を通して映画そのものや、製作に携わるスタッフに対して愛を捧げていると思う。