なつこ

幸福路のチーのなつこのレビュー・感想・評価

幸福路のチー(2017年製作の映画)
3.9
優しい作品と聞いていたけど、 優しいタッチで胸にザクザク刺さった。

もちろん、当時の台湾のような複雑な社会情勢では育ってないし、チーのように両親から将来について口を出されたことは無い。
けど、自分がチーと同世代で、共感ではなく、ガッツリと気持ちが重なってしまった気がする。

おばあちゃんが亡くなって、久しぶりに故郷に帰省したチー。
亡くなったはずのおばあちゃんとの対話や、彼女が歩いてきた人生を振り返ることで、アメリカでの生活に疲れたチーの今が浮き上がる。

当時の台湾の情勢や生活水準が、世界情勢に疎い私でも分かるくらい、分かりやすく、でも自然に描かれていた。

ニワトリとハト。
飛べる鳥と飛べない鳥。
私は勝手にそこに意味を感じてしまった。

幼い頃のみんなの夢。
何にでもなれると思っていた。
でも現実は、何をどう頑張っても、何者にもなれなくて、想像していた未来には程遠くて、悩んで苦しんで、それでも人生は続く。
後悔とは違う。でも正しかったんだろうか?と今までの選択を思い返す。

偶然の再会と突然の別れ。
気持ちだけでは解決しない関係。
あんなに頼れる存在だったはずが、老いて心身ともに弱って見える両親。

感動するシーンとか泣かすシーンは無いのに、エンドロール見ながらホロホロ泣いていた。
これからも迷っては振り返り、悩んで選択して生きていく。
なつこ

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