おなべ

ミッション:8ミニッツのおなべのレビュー・感想・評価

ミッション:8ミニッツ(2011年製作の映画)
3.7
【8分間】

所謂『恋はデジャヴ』や『時をかける少女』のようなタイムパラドックス映画に属する本作は、これまでの同種作品とは異なり “8分間” “別人の肉体” という制限がある。この種の映画は細かな設定や脚本.構成が物語の良し悪しを左右するが、今作は中でも異色で鑑賞者に物語の解釈や捉え方が委ねられる為賛否両論別れる問題作だった。即ち結末を「happy end」と捉えるか「bad end」と捉えるか意見が割れ、個人的には考察に考察を重ねる事により前者の考え方に落ち着いた。

《ダンカン・ジョーンズ》監督ハリウッド進出第1作目。《ジェイク・ギレンホール》とは『月に囚われた男』以来二度目のタッグ。

米空軍パイロット大尉は未来に起こる爆破テロを阻止すべく仮想世界に精神と肉体が乖離し精神だけが過去に起きた一定の時間軸に転送される。戸惑いを感じつつ転送した他人の体に乗り移り限られた一部のデータの中で8分間で事件解決を目指すが、自身の現状について驚きの事実を告げられ…。※現在の時間軸と仮想世界の時間軸は異なるが、転送されてる間も時間は同時進行する。

事件解決に向けたミステリーは元より、主人公の生い立ちと人間関係がこの作品の味噌。また、作品を通して倫理感を問う内容も含まれている。少し謎めいた部分はあるものの全然気にならず楽しめるし、更にもう少し突き詰めれば至上のタイムパラドックス映画になっていた。

【以下ネタバレ含む】

◉転送された回数分だけ新たに仮想世界が形成されるという事は結局現在では爆破テロは阻止出来たものの、その過程で幾つもの派生したbad endの世界もあるわな。
しかし、個人的には【❶グッドウィンが生命維持装置をshutdownする事により本来戻る筈の大尉の精神が戻る行き場を失ったお陰で記憶はそのままでショーンの肉体のまま平和な未来を歩んでいける…しかも爆破テロは防ぎ、親父と和解し、恋人うまくいった幸せ一杯の世界。❷爆破テロが未然に阻止できた現在。❸終盤にグッドウィンへのあのメールの内容】等々を加味するとhappy endでいいと思うねんな。


◉記憶を消されてはミッションに飛ばされ、生きてる限り精神を使い回され、使い物にならなくなったらポイッ…みたいな倫理感を問う内容が引っかかった。《ニール・ブロンカンプ》監督の『チャッピー』とかR2-D2の様にアンドロイドやロボットの記憶をリセットするような(アニメ等でもよく見るシチュエーション)、その行為に対して倫理的に問題があると思う。おそらく今後人類が直面する事になるが。

本作に関しては、博士は上半身と下半身に分断されればいいのにと思った。
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