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命みじかし、恋せよ乙女のmireiのレビュー・感想・評価

命みじかし、恋せよ乙女(2019年製作の映画)
2.8
「命みじかし、恋せよ乙女」

ドイツの映画で監督はドーリス デリエ、映画作品や文学作品として多数受賞している。普段なら全く見ることのない作品だが、樹木希林の遺作だと知ったため観賞する事にした、この作品は樹木希林の最初で最後の海外の女優作品となった。
ドーリス デリエ監督の作品に出ている日本人は樹木希林だけではない、「フクシマ モナムール」という作品では桃井かおりが出演している。
おそらくこの監督は日本文学や日本の作品、芸術が好きなのだと思う。
初めに出演者やスタッフの名前が出てくるのだがその背景が歌川国芳か鳥山石燕か正直分からないのだが江戸時代の浮世絵画家達の絵だった。

海外らしいゆっくりとしたストーリーの進み方だこのままでは寝てしまうと思ったが、樹木希林を見る為に何とか観た。
ストーリーとしてはお酒に溺れた男が仕事を失い、家族も失い、孤独になっていたそして彼のもとにユウという日本人女性が現れる。彼女は何年か前に東京に訪れていた彼の父と親交があったためその父の他界後、墓参りや生家を見に来たのだという。
最初はそのユウという女性の観光に付き合っていた男だが、次第にその男は自由な彼女に惹かれていった。そして彼は彼女を探しに日本に行く。

ここでようやく樹木希林が登場、彼らが宿泊した茅ヶ崎旅館の女将が樹木希林であった。この映画は1時間56分あるのだが、樹木希林が登場するのは1時間26分からだった、かなり待った。

樹木希林この時もう既に病に殆どの部位を蝕まれ苦しんでいたのだとは思うがすごい力強い演技だ。「久しぶりに客が来たから嬉しくてつい、ごめんなさいね」笑顔も優しくて、幸せそう。
ユウの写真を見て動揺する女将、目が泳ぐ、基本的な芝居だがそれを自然に出来るのが樹木希林だ。

着物を女性用と男性用用意し、女性用を着た主人公に対して「そっちが好きだったのね」とすんなり受け入れる女将。今の世界に必要な心だなと思った。

後半からで少ししか出てきてないのに、作品の中心にいるような大黒柱のような存在、彼女のオーラや佇まい。今まで生きてきた私とは桁違いの人生経験がここまで彼女の存在から優しい気持ちのまま感じ取れること出来る。今いる他の女優でこんな風に感じれる事が出来ようか、いや出来ない。

彼女か握ったおにぎりを食べたい。美味しそう。
最近キツめのダイエットを初めてから食事シーンに目がいくようになったが、映画には必ずと言っていいほど食事シーンがある。
生きると言う意味がある、食事のシーン。
生きる、生きろ、と言うメッセージが殆どの映画に入っているのだと思った。

この映画はファンタジー要素も少し含まれている為、本当に理解力が必要な作品だと思う。だが、感動する場面が多い。
樹木希林が主人公の着付けをしてあげている時に「あんたは生きてるんだから、幸せになるんだよ」と言っていた意味が終盤にわかる。
この映画は途中で飽きが来るかもしれない、だけど最後に大切なメッセージをくれる。

ありがとう、樹木希林。あなたに出会えて本当によかった。
mirei

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