MURANO

ペイン・アンド・グローリーのMURANOのレビュー・感想・評価

3.8
「痛みと栄光」というタイトルだが、ほぼほぼ全編「痛み」の方が描かれる映画でした。

アントニオ・バンデラス演じる主人公は「栄光」を掴んだ著名な映画監督だが、キャリアも晩年となり、引退状態。

映画を撮ってるシーンは描かれず、長年の脊髄の痛みに悩まされて、タクシーを降りるだけにしても腰が痛そう。

挙げ句の果てには、キャリア全盛期には嫌悪していたヘロインにまでハマってしまって。

この様子を演じるバンデラスの廃れた感じ、彼が持つセクシーなイメージからはだいぶ遠い分、ギャップがあって印象的でした。

そのバンデラス演じる映画監督が痛みに苦しみながらいろいろ回想していく中で、かつて同棲した男性との再会という話も出てくる。

同棲愛の要素が欠かせないところがやっぱりアルモドバル作品だし、劇中の映画監督にアルモドバルが自分自身を投影している感は言わずもがな。

映画監督のようなクリエイティブを強烈に発揮する仕事は、私生活ではその代償的に大きな痛みを伴うのかもしれません。

正直なところ、アルモドバルも『ボルベール』以降は傑作と言える作品は出せていないようにも思い、撮れない映画監督役に自分の苦しみを投影したのかも?なんて考えたりもしました。

痛みの告白という点でかなり私的な作品ゆえ、巨匠のベストと言える作品にはなり得ないけど、確かに『ボルベール』以降では一番良かったと思います。

巨匠ってこういう作品を必ず撮りたがるよね、という一本(笑)

とは言え、なんだかんだでアルモドバルが好きなのは、強烈な色彩感覚と、ペネロペ・クルスの使い方でして、この映画でもそこは健在でした。

あの赤基調のキッチンとか、川で洗濯してるペネロペとか、映像を一瞬見るだけで「コレ!」って感じで昂まりますから(^^)
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