ikumura

ペイン・アンド・グローリーのikumuraのレビュー・感想・評価

3.7
【アルモドバルの「見出された時」、てか母ちゃんがペネロペクルスってマジすか?】

去年アルモドバル作のJulietaをみて、うーん、なんかやりたいことは分かるけど淡々としすぎててちょっとガッカリ、
さすがにアルモドバル監督も年取ったのか?
という感じで、今回もさほど期待せず。
この映画も、基本的には同じような、淡々とした語り口で、見終わった時にすごい衝撃とかなく、クスッ、て程度だったんだけど、

映画館を出て数分後、待ってたバスに乗り込む瞬間、
「うわああ、いい映画だったなあ」とこみ上げてくるものが。
そんな映画。
フリエータも、うまく琴線に触れれば感動したのかしらん。

アルモドバル本人をモデルにしたと思われる映画監督が主人公の、半自伝映画。
まあ今までの映画でも自分の経験をうまーく織り込んできた監督なので、
いろんな意味でメタな作品ではある。
しかしそこで過剰な技巧に走るでもなく、
ごく自然に、生々しく、しかしウェットになりすぎない「自分語り」を展開している。

アルモドバルの作品って考えてみると00年代以降のしか見ていない気が。
初期のからちゃんと見てたらもっと分かったこともあるのかも。
とはいえ、そこまで身構えなくても楽しめる映画。

創作せずには生きていけない、
しかし老いを自覚し、身体はガタガタ、
もはや何も生み出せない状況に陥り、
ヘロインと過去の回想に逃げ込む。
母や周辺のエピソードを映画に利用したことを母に詰られたり、
そもそもこの生き方自体が母の期待に沿うものではなかったのではないかという問い、
愛を求める心が創作の源泉なのに、
それを得ることが不可能なように見える瞬間が胸を刺す。

しかしそこから先、自己憐憫や言い訳の泥沼に入り込むのではなく、
創作者としての矜持を何重にも見せる結末へ持っていく話の進め方が鮮やか。

あの色彩感覚や幾何学的配置も健在。
途中の3Dアニメみたいなやつとそのナレーションは役割が謎だったけど(笑)
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