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淪落の人/みじめな人の821のレビュー・感想・評価

淪落の人/みじめな人(2018年製作の映画)
4.5
もちろんこのコロナウイルスが終息してからで、その時にまだ上映中であれば、ぜひ。ぜひ!鑑賞してほしい作品です。ものすごく泣けます。観賞後は泣きすぎて軽く脱水症状起こしてました。

舞台は香港。ある事故により肩より下が不随となってしまった一人暮らしの男性と、フィリピンから仕事を求めて香港に移り住んだ家政婦の女性の話。多くの人が涙したフランス映画「最強のふたり」にエッセンスはとてもよく似ていると思います。

2人ともそれぞれ事情を抱えていて、社会の隅っこに追いやられ、夢も諦めかけていたんだけど、それぞれがよく(本当によく)影響しあって、夢を叶えようという気持ちを取り戻していく話です。とても前向きになれる映画です。

普通の映画だと泣ける山が1〜2回ありますが、これはとんでもない数の山があります。山脈です。ひたすら涙が止まらない。マスクビチャビチャになった。

個人的に香港は本当に大好きな土地で、年に1回は訪れないと済まないほどです。観光する中で、竹で組まれた足場をヒョイヒョイと身軽に渡っていく作業員の方々や、週末にスターフェリーの船着場でシートを敷いて話し込む多勢の家政婦さん達の光景を何回も目にしたことがあります。
香港では当たり前に存在しているそんな人たちの生活にスポットライトを当てた良作。特に、香港の雨傘運動に賛同を表明して仕事を干されてしまったアンソニー・ウォンが脚本に惚れ込んで、ノーギャラで出演しているという話にも本当に心打たれました。

大好きな香港の風景も沢山切り取ってあって、日の光があまり当たらない社会を取り上げた重さもありつつも、でも暖かくもあるヒューマンドラマ。本当に素晴らしい作品でした。

これ書いてる今も思い出して涙目です。もうね、冒頭のカット、音楽から美しすぎて心に沁み入って泣ける。ぜひ沢山の人に観てほしい。

私はこの作品、先月参加した朝日新聞主催の「シネマニア・サロン」で教えてもらいました。素晴らしい作品との出会いを与えてくれて本当に感謝しています。
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