いろんな意味で『フェアウェル』はあまり適切なタイトルじゃないと思うんですよね。中国語タイトルは『别告诉她』で「彼女には教えないで」の意味。この方が適切なんじゃないかなあ。
「実際の嘘にもとづく話」とあるようにルル・ワン監督の実際に体験したエピソードが元になっています。主人公ビリを演じるオークワフィナ(=ルル・ワン役)はどことなく安藤サクラっぽい。海外生活が長い人は「出羽守(でわのかみ)」になりがち。外国が正しく、母国は間違っているような言い方をしてしまいがち。実際は単に違うだけなんですけどね。本編の中でもビリはアメリカと中国の違いをホテルの従業員に聞かれ「単に違うだけ」と言います。
映画のテーマも「二つの文化」ですね。アメリカの文化では「癌は告知すべき」だし法律で告知義務が決められています。しかし、中国では告知は法律で定められてませんし、家族は告知しないことを選びます。どちらが正しいなんて言えないですよね。
それにしても、これだけモロに中国映画がアメリカで受け入れられるのもすごい話です。アメリカの映画ですが、ものすごく中国映画です。舞台は中国だし、言葉もほぼ中国語。やはりモロにシンガポール映画だった『クレイジー・リッチ!』が受け入れられた勢いなんでしょうか。『パラサイト』もアカデミー作品賞取りましたしね。アメリカでは字幕は絶対に受けないと言われていたのはもう過去の話なんですねえ。
なお、主人公のおばあさんは名前のようにナイナイと呼ばれていますが、これは中国語「奶奶」で父方の祖母の意味です。「(お父さん方の)おばあちゃん」の意味で、名前ではありませんよと。