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フェアウェルのmanamiのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
3.4
主人公の思いや境遇に共感したからこそラストが絶望的だった。どんでん返しによって観客の気持ちを救い、その中で救われなかったわたしの気持ちだけが行き場を失い空中を彷徨っていた。そんな自分本位な思いを作品に対して抱くのはお門違いだとは思うけれど、主人公に感情移入し過ぎた結果、わたしと彼女の決定的な違いに絶望してしまった。祖父母というのは特殊な存在だと思う。孫としてめ一杯の愛情を受けながら、けれども親によって決められる彼らの重要な決定に口を挟めない。わたしはここ2年ほど年末年始もお盆も帰省しなかった。残された学生生活の中で、来年こそは地元に帰って祖母の家で過ごそうと思っていた、けれどわたしに次はなかった。最期の会話を覚えている、電話がかかってきた時わたしは美容院にいてその電話に出るかどうか一瞬躊躇って電話を取った。あれが最期になるとは、いや電話越しでなんとなく感じとっていたのかもしれない。大切な人のそばに居られないということの重みを痛いほど思い知った。彼らから享受してきた愛情と同じだけの愛情を彼らに返せるように、当たり前のことを当たり前だと思わないように、いつだってわたしは夜行バスで帰路に着く、暗くて孤独で、そして死という現実が近づいてくる底冷えした哀しみを思い出すことができる。この作品の中で彼女が飛行機に乗るシーンは描かれていないが、座席に座る彼女の思いが手にとるように分かって余計に辛かった。ナイナイの言動にクスッとしながらも、そこにある直視し難い現実に、中国の生死感に戸惑ったり。ほとんど中国で撮影され、中国語が飛び交うアメリカ映画というのもシュールで面白かった。
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