Aya

嵐の中でのAyaのレビュー・感想・評価

嵐の中で(2018年製作の映画)
4.0
#twcn

この映画が傑作じゃないなら、他のどの映画も傑作じゃない。

あまりにも良くできた、見事としか言えない映画。

この映画、たくさん見てるの?
こんな面白くて、素晴らしい作品、どうやってみんな見つけるの?

私、なんとなくしんどい映画を見たい、と思ってネトフリのマイリスト からテキトーに引っ張ってきただけなんだけど・・・見てない人、本当に見てほしい!!

何が正解か。
何が幸せか。
何が夢で何が現実か。

そして何が本物の愛か。

愛する人を思いやることの真髄を見た、って感じです。

不幸な事故で命を落とす少年に心を痛めながら、彼を救おうとして全人生が狂わされる女に絶望しながらも、死体の処理の仕方が冷静で肉と骨を刻む音演出はイイ感じだな、と3つセットで楽しめる作品、だと最初は思ったのですが、もっと深く、細部まで手が混んでいて、これを傑作と呼ばずして何が傑作か。

スペイン映画人のレベルはどこまで。。。

※このレビューは映画を見ながら書いていたのですが、いちいち感心しまくってるのに、話が二転三転四転五転と転がりに転がったため、散文になっております。

「ロスト・ボディ」や「ボーイ・ミッション」というスペインスリラー界では安定のオリオル・パウロ監督。

1980年代。ベルリンの壁崩壊の時期のスペイン。
母子家庭の音楽好きな少年ニコはtime after timeを奏でながら夜勤に向かう母をお見送り。
プレゼントにお気に入りのカセットテープを添えて。
ママのキッスが最高!

何気なく犬ちゃんに導かれて隣のお家に入ってみると、女が血を流して倒れ、男がナイフを持って追いかけてきた。
逃げようと外に飛び出したニコは車に撥ねられてしまう。

25年後の現代。
引っ越したてのベラは可愛い娘と保険外交官の忙しい夫が出張中。
※私、理由はどうあれ、聞いてない説明がしつこい人、基本信用しません。
 しかもこの夫役のアルバロ・モルテさんはかなりの色男だ。
リフォーム中の家には多くの人物が出入りしている。

新しい家でパーティーを企画中。仲間を誘って、娘もこっそり友達を誘うがお天気、雲行きは怪しい。
本来雨量は多くなく、気温も低くないはずのカナリア諸島だが、みな冬服を着ている。

研修医のベラは隣に住むパイロットのアイトルは嵐を恐れる母と同居しており、パーティーにも誘われる。。

家の片付けをしている最中、屋根裏の部屋から一本のビデオを見つける。
そこに写っていたのは冒頭の歌うニコとニコの死を伝えるニュースだった・・・。

家族ぐるみの付き合いのあるアイトールはベラの元カレらしく未練たらたら。
娘の前でも堂々と「なぜ俺と結婚しなかった?」と口説いてくる大胆な男。
そしてなんと、ニコと友達だったと言い、当時の悲惨な事故と殺人事件を話して聞かせる。そう。夫婦が越してきた家は、ニコが住んでいた家。
そこに轟く雷。
同じ、嵐の夜だった。

しかし夫婦のラブラブっぷりすげえな
お互い褒めまくりで最高だな。
すげえスペインが同じ地球と思えなくなってきたw

夜中にビデオが勝手に再生を始め、起きたヴィラは驚く。
なぜなら、ビデオの中のニコが話しかけてきたのだ。
しかもこちらからの声かけにも答え会話ができる・・・。
状況を把握できないニコとなんとかニコが隣の家に行かないように止めるベラ。

攻防は続き、25年前と現代とビデオ(テレビ)を通して会話が成立し、その時代で起きたことが時系列シャッフルで挟まる。
そしてそのビデオを介した会話が元で、現代に歪みが生じ始め、ベラはは一晩にして想像もできなかったことに・・・。

ベラはニコを助けることができるのか?
ニコはベラのことを夢だと思っているが、信じてくれるのか?
そしてベラの生活は・・・。

この設定はなかなかおもしろいぞ。
過去未来がお互いに影響を及ぼす系はよくあるが、この角度から入ってくるのはなかなか。
被害者が追い詰められ正当なことをしているつもりが、周りには加害となって広がる。

100%の善意がベラの人生を全て狂わせるとは・・・。
でもわかってたらベラはニコを助けなかったかな?
あと、スペインの警察すごい。否定をしない・・・。

しかも顔がいい・・・。
結婚指輪もしていないし、していた後もない。
やばいワンチャンきた。

でも段々、ベラは本当に不幸か?という疑問にもぶち当たる。

対してニコはニコでテレビのベラの言っていたことが本当なのか?
本当だったら大変なことになってしまう!と少年探偵に。
件の殺人事件自体の真相と、アクシデントにも関わらず、職業柄か食肉業のおっさんが職人技を遺憾なく発揮し、冷静に人間的に処理されてゆく姿も好感が持てる(ナニイッテルノ・・・)。

何気なく一緒に過ごしていたある人物の狂気、そしてその後の人生を平穏に生きたことの罪。

ニコー!!
でもイイんDAYO!
指定ついてないもん♪

あと、スペイン建築よくわかりません。
部屋 in 部屋ww
この手があったか!
DIY好きにオススメです!

そして、ここまできて、薄々変だな、と思っていたのですが、それが文化や言語の難しさではなく、映画的意図演出だと気づく。

スパニッシュ、ホラーだけじゃなく、スリラーもうまあ!サスペンスの正しい機能の仕方がすごい。これが混ざり合うことなくきちんと共存してるのすごいよ。
しかも科学的見地からこの物語を語る人まで出てくる。

自然現象まで巻き込んで事を難しくし、思わぬ方向から事件の真相が解明されていく展開も目を見張るものがあるし、予期せぬ人が的確なアドバイスをする。
筋を通してひとつひとつの疑問が解かれ始め・・・ベラの変わる前の人生と変わってからの人生それぞれに終点が置かれる。

ベラが一貫して「子供のために」を突き通すのもいい。
一見して「ただの妄想の塊」のようなベラに選択肢を与えられるのも、彼女があの選択肢を選ぶのも良き。

いやー半分見た時点でもこれだけ見事に整理されて詰まってるから唸るしかないぞオリオル・パウロ監督!

LA Film School出身、ギレルモ・デルトロに志道し、「消えた来客」や「ロスト・アイズ」のギレム・モラレスと共同脚本、思っていたよりただものではなかった!!
45歳にして要注意人物ではないか!

ただ名前が似てる人が出てたり、人間関係入り組んでるので、わっかんねー!ってなる人もいるかも。

色々はしょるんですけど、ベラはなんかニコの話を元に小説を書いた作家がいてその人を追ったり、する間も刑事さん付いててくれる。
キタコレ。
ワンチャン以外のなんや?

対してクソ野郎うぅうぅ!!
これも過去と未来のリンク。
まあ、今となっては「お前」には関係ないが。

でも、まあ、漏れなくほとんどの男が不倫してるんですけどね!
遊びじゃなくガチ愛で!
こらあ!
お国柄とかじゃねえぞ?!

ちゃんとニコがどうなったか?って求心力もぶれないんだもん(T_T)
ニコー!!
ニコー!!!
ニコー!!!!

わかってたけど、わかってたけど!!!

(T_T)(T_T)(T_T)

もう!!
だからどっちが幸せなの?!
ニコに出会ってしまい、多くを失ったベラと彼を(知らなかった)現代と!!
ここにきてロマンチック胸キュン要素まで挟むか?!

私がベラだったらどうしたかな・・・。
どっちの人生を選んだかな・・・どちらにしても辛すぎるし、どちらにしても幸せだ。
でもそれを決めるのは他の誰でもないし私でもない。
ベラだ。

主人公、視点がどんどん変わり、それによって正解が変わり、見ている我々の「こうなってほしい」も変わる。
そして奇跡が、起きるー!!!!

こ、こんな結末、ジャンルごと予想してなかったよ!!

後、映像の美しさ(カメラの綺麗さ)も一級。
引くところがマジでない。

うっうっうっうっ(T_T)
お互いを思いやり、1度はすべてを捨てた2人が・・・ラストに・・・号泣!!!

嵐の中で。
邦題、直訳。素っ気なくも感じるが、他にどう付ける?

ちなみにスペインでいうtormenta日本語に直訳したA・RA・SHIがどの気象現象のことを指すのか調べたのですが、雷がなり、これから大雨来るぞー!って感じぽい。台風とかではなくどっちかと言うと大雨、もしくは通り雨の前の感じ寄りだった。


日本語字幕:石田 里英子
Aya

Aya