109mania

もみの家の109maniaのレビュー・感想・評価

もみの家(2019年製作の映画)
3.5
 不登校で母親との関係性をうまく築けない彩花の心の変化を描く。
 アラフィフになっても、まだまだこじらせキャラから脱却できない自分にとって、琴線に触れるエピソードが沢山詰まっていて、都度涙を流しながら見ていた。
 
 ハナエおばあちゃんのエピソードがまず泣ける。「おばあちゃんは迷惑なんかかけていないから!」と自分の親族には注げない彩花の愛情が、他人のおばあちゃんに向けられる。おかげさま、お互い様の美しさに、素直に感動する。
 自分の誕生日にホストマザーの出産が重なるエピソードも感動的だ。新たな命の誕生に立ち会う感動の涙と、母親に対する、自分を産んでくれた感謝の涙が、彩花の頬を伝う。私も嗚咽寸前だ。
 その晩、彩花から感謝の言葉が送られてきた母親の姿も、描かれる。報われた気持ちに喜ぶ母親と、その肩を抱く父親に私の嗚咽(寸前)も止まらない。ハナエおばあちゃんが生前、彩花に「親ほど割に合わない商売はない」と伝えるシーンに対して、逆説的に呼応するシーンだと感じたのでした。

 もみの家で起こる奇跡の数々は、実際にも確かに起きている事だろう。でも現実にはいいことばかりではないと予想する。親子がいがみ合ったまま、そのまま不幸な結末に振り切ってしまう悲劇は、新聞やテレビを賑わしている。これも現実。
 この映画はその意味でリアルさの追求は放棄しているとも言えるだろう。でも、それで良いと思う。いいところを徹底的に描いて喜びに浸れたのだから。
 人を信じたくなる、いい映画だ。
 
 
 
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