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もみの家のmuraのレビュー・感想・評価

もみの家(2019年製作の映画)
4.3
キム・ギドク『人間の時間』を見た直後にこれかぁと。振り幅が大きい。あれも映画、これも映画。あらためて映画は奥が深い。

ベタな話ともいえる。心を閉ざし、他者との関係をうまく築けない都会の少女が、田舎の豊かな自然と優しい人びとにふれ、心を開き、成長をとげていく物語。でも、ベタではあるんだけれども、こういった映画にはやはり感動をおぼえる。それも、主人公のアヤカを演じた南沙良の存在が大きいような。

東京で父母と暮らす16歳のアヤカ。学校に行けず、部屋に引きこもる。とくに母の心配は大きい。そこで父母が頼りにしたのが、富山にある「もみの家」。アヤカ同様に学校や社会になじめない若者が、3人家族とともに集団で生活を送る。農作業に従事しながら。最初は溶けこめないアヤカも、しだいに心を開いていく…

出会いと別れがくり返される。人間とはもちろんのこと、農作物とも。田植えや稲刈りといった作業をとおして。

ここでは悪いひとが出てこない。それも理由がある。「信じられないほど残酷なヤツも、信じられないほど優しいヤツもいて、今までたまたま気が合うヤツがいなかっただけ」といった言葉により、アヤカは希望を見出す。だからここては「気が合うヤツ」と出会うことが必要となる。

それを「できた話」と見るかどうか。田舎の自然と社会を美化しすぎなのかもと…

でも、それを納得させるだけのものがこの映画にはあるかと。それは映像。トマトが美味しく見え、夕焼けに染まる田園が美しく見える。そこが撮れているかどうかがキモかと。

アヤカの満面の笑みもそう。最初は見えなかった表情が、髪をあげ、たんだんと見えてくる。そこがこの映画のいちばんの魅力。