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TENET テネットのkaitoのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
3.9
『テネット』

クリストファー・ノーラン監督の11作目の長編作品。ノーラン監督は好きな映画監督の中の一人であり、本作『テネット』も今年最も楽しみにしていた映画のうちの一つであった。比較対象として『プレステージ』『メメント』の方が好みであることは確かだが、本作もシンプルに楽しむことができた。

あらすじは省略

まず役者に関してだがジョン・デヴィット・ワシントンを筆頭に皆素晴らしい演技をしていたと思う。スパイク・リー監督作品『ブラッククランズマン』での演技よりも個人的には好みだった。またニール役を務めたロバート・パティンソンだが、今回の映画で最も興味深いキャラクターでキャストは適役だったように感じる。少し謎めいており多くの人が魅了される人物であった。またケネス・ブラナーも演技はよかったように感じる。しかし悪役特有の脅威さはあまり感じられず、これは少し残念だった点。


世界観は本当に素晴らしい。同監督作品『インセプション』でも興味深い世界が織り成されており、この点に関してはノーランに任せておけば心配ないと太鼓判を押せる。時間が逆行する見せ方は本当に興味深く、視覚的な面白さでいえば群を抜いて2020年で一番だと思う。順行と逆行が交わる瞬間の映像が個人的には一番好み。


視覚的な面白さは申し分ないが、感情的になれる瞬間は極めて少なかった。これは『インセプション』でも感じたこと。人物が死にそうになっていても、悲しいとか焦りは全く感じられなかった。世界観が膨大すぎるあまり、キャラクター設定が孤立していたのかもしれない。また視聴者と同じような感覚を持ち合わせる人間味あるキャラクターは誰一人いなかったため、映画のラストシーンでも胸にくるべきものがあまり伝わってこなかった。演技はうまいけど主人公はあまり興味深くはなく、ニールの影に隠れてしまう感は否めない。映画の冒頭の進み方もゲームのチュートリアルみたいに淡々としていて個人的には好きじゃなかった。


世界観や視覚的な観点で言えば、満点に近いほど素晴らしい。そこに他の要素が追いついていれば個人的にはもっと好きになれたと思う。というようにほぼ『インセプション』と同じような感想になってしまった。僕はより身近な視点で描かれるノーラン映画の方があっているのかもしれない。本当はもっと言いたいことがあった気がするけど、観てから2ヶ月近くがたったので、仕方ない。思い出したら追記する。
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