がんがん

TENET テネットのがんがんのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
5.0
オールタイムベストが更新されてしまいました…

マイベスト作品はインターステラーだったのが本作テネットに…2020年ベストを超えて、これはもうベストオブベスト!!スコア5.0とか物足りない…スコア5億くらい付けたい…

初日IMAXレーザー鑑賞につきレビュー追記。



「時間の不可逆を可視化」

本作の醍醐味はこれに尽きます。

時間とは…過去から現在を経て、未来への一方通行であり、決して逆行することはできません。

それを映画というカルチャーが織りなす嘘により。虚構の創造物としてタイムトラベルものはたくさんありますが。自然法則では成り立たないものを、映画のスクリーンという想像の世界で嘘を創造する。


本作の何が凄まじいって、単純にタイムトラベルするのではなく、順行と逆行を同時に一つの画面で描いていたところ。しかも役者さんは逆再生ではなく、逆戻りのお芝居をしているという。


さらに壮大なのがタイトルと主題。本作はテネットという冠の通り、信条を巡って戦う物語。

未来は決められたものであり、過去を変えても影響は存在しないという決定論の未来人。それでも運命に抗うことにより、何かが変わるかもしれないと行動に徹する主人公やニールたち非決定論。

戦争もどちらもそれぞれに、それぞれの正義があるように。過去から未来への順行。未来から過去への逆行。この決して混じることのないそれぞれの時間軸=テネット、信条をかけて戦う人々の命=運命。

運命とは…自らが運ぶ命なのか、神によって運ばれてくる命なのか。ここにノーランは人間たちの感情や心情を、登場人物たちの行動や信条にして描きたかったのではないでしょうか…


また音楽もニールの初登場のシーンや、逆行の場面ではちゃんと逆再生されてたり。

ワーナーのロゴが赤、SYNCOPYのロゴが青と劇中での順行と逆行に分けられている遊び心(ちなみに赤と青は、動脈と静脈のメタファーだったのだろうか…?)エンドロールのあとまたワーナーのロゴが青になるという茶目っ気まで。

作中、至る所に仕掛けが用意されていて全ての画面が観ていて心躍ります。


度肝を抜かれたカットが、冒頭のオペラ座のあとの拷問シーン。

奥に進んでいく列車と、手前に進んでくる列車との間に、拘束された主人公の構図。19時になったので時計の針を巻き戻したり。

列車の動きにより時間の経過という、過去と現在と未来がワンカットで表現されていて、さらに時間の逆行を人の手で作為的にする物語であると、ここですでに示していて…これは本当に美し過ぎました。


そして予告でも一番気になっていたハイウェイでの車の逆行シーン。あれたぶんCGじゃなく、ちゃんと車を動かして撮影されていますね。

本当にリアリティがありました。マトリックス リローデッドでトリニティーが逆走するシーンも凄まじかったですが、このハイウェイシーンも迫力が鬼でした。

地味にサイドミラーに傷が付いていて、途中で傷が直る、という逆行表現も好き。


本作ノーラン史上超難解作品と言われていますが…物理学の法則が少しでも頭に入っていると、物語が頭に入ってきやすいと思います。

まどかマギカを観ていてよかった…まさかキュゥべえに感謝する日が来るとは…

対消滅もNetflixオリジナル作品のアナイアレイションで勉強できたので、これも観ていてよかった。



エントロピーとは?

水は火のエネルギーが加わるとお湯に変化する→過去から未来への順行

お湯が熱のエネルギーを失うと温度が冷めて水になる→未来から過去への逆行

このエネルギーの移動をエントロピーと言います。これが頭に入っていたので、時間の不可逆における反転についてすんなり理解できました。

それでもラストバトルは、マジで誰が何のために、何をしているかわからない複雑さ!あのスケール感はもはや無茶苦茶過ぎて笑うしかない!!せっかく建設されたビルがすぐに崩壊してしまう…あのビル可哀想…!


時間は決して巻き戻せない。過去から未来へ一方通行に必ず進む。

水がお湯に変化して、また水に戻るように、物理の法則にエントロピーが絡んでくると不可逆に反転が生まれる。

このエントロピーを利用して、いかに人類の滅亡を防ぐか。第三次世界により起きる悲劇…それは人類の消滅。

対消滅とは?
量子力学語で、粒子と粒子がぶつかり合うとお互い消滅すること。
対生成とは?
その逆で生成されること。

未来の人々が過去に逆行してしまい、人類が対消滅してしまうのを防ぐ、ということでよかったのかな。

逆行した時間の中では酸素も吸えない(酸素から二酸化酸素ではなくて、二酸化酸素から酸素を吸うことになるから息が出来ない?)、爆発すると熱で逆に低体温症になる、爆発はバラバラになった破片から秩序へ収束されていく。

など、事象の不可逆性の中を反転して進んでいく主人公の姿に熱くなりました。


テネット回文もちゃんとエッセンスとして含まれてましたね。

SATOR→ケネス・ブラナーの役柄の名字
AREPO→贋作の作者の名前
TENET→人類滅亡を止める暗号、本作のテーマ
OPERA→キエフのオペラ座
ROTAS→オスロ空港の警備会社の名前


最後の作戦時間が10分…10の順行(TEN)、逆行(NET)、交差するTENET …タイトルだけでも一体どれだけ考え込まれているんだ…




あとIMAXレーザーGTで2回予約済みなので楽しんできます!










IMAXレーザー3回、IMAXレーザーGT3回、ドルビーシネマ1回、合計7回観賞を経て更なる追記…

もうね…これはアハ体験ですよ。観賞回数を重ねるごとにアハ体験の連続。本当によく練られた展開の脚本です。

初回はなんとかストーリーに食らいつくように観て、2回目は主人公目線で物語のアハ体験を感じて、3回目はニール目線で命を賭して世界を救う覚悟をして。


特に印象的なアハ…

アハ①

ハイウェイでケースからアルゴリズムを抜き取り、ケースだけをセイターに渡す→アルゴリズムは逆走してきた車に投げる→逆走してきた車は逆行した主人公自身だった→しかしセイターも実は逆行しており、主人公が逆行してくるところまで記録を見ていたから、主人公たちの裏の裏をかいていた。2回目観ると、ちゃんと酸素マスクを付けた逆行セイターが車に待機してるカットも映していて…これ作中一番鳥肌立ったアハ体験ででした。

→これ車に待機してたのは逆行セイターではなく、逆行運転手(ボルコフ??)でした。

アハ②

逆行世界での空港廊下の自分自身との格闘アクション。最初は防護服の相手が変な動きに見えて、今度は主人公の方が変な動きに見えて。これ最初の順行してる主人公が防御してるのが、逆行にとっては攻撃になってしまってるんですよね。しかもこれ逆再生ではなく、逆行のお芝居のアクションという物凄くレベルの高いアクションをしている。例えばストレートパンチを殴ろうとすると、拳を前に突き出す方向に力が向いているのか、戻す方向に力が向いてるのか。たぶん物凄く計算してアクションをしているはず。だからパンチやキックでは力の方向がお互い逆で決め技になりづらいので、確実に力を込められる絞め技中心の戦法になっていたと思う。

アハ③

最後の戦場で、セイターの手下が地下への入り口に爆弾をセットするのをニールが観ていたおかげで、逆行から順行に瞬時に切り替え→回転ドアでちゃんと向こう側の自分が見えていることも確認→未来へ先回りし主人公が受ける銃弾の身代わりになる。最後のお別れの後にニールは一人でまた地下へ潜って扉の鍵を開け、銃弾を受けに行かなければならないのか…何度も主人公に対して「起きてしまったことは仕方がない」って言ってたのは、俺が君を守って死ぬけど仕方がない、君は世界を救うために生きてくれ…って優しさであり願いだったのか…ニールこそ本当の孤独のヒーローだよ…



IMAXレーザーGTで味わうテネットは格別でした。1.43:1の画角で堪能するノーランの渾身のカット割り。

まず冒頭オペラハウスでの指揮者のカット。拷問シーン。ムンバイでの逆バンジー。アマルフィの絶景。逆行の世界に足を踏み入れた主人公の酸素マスク姿。ハイウェイでの車の逆回転。

などなど…全部1.43:1ありきで構図が計算されていました。

むしろ通常のものとは、もはや別物かもしれない。どうかエキスポか池袋に行ける距離にある人は、一度はIMAXレーザーGTで観てほしいと切に願う…


時間の逆行は現実世界ではできないように。記憶の逆行もできない。一度知ってしまったことは、知る前に戻ることはできない。

無知は最大の武器。だからこそ主人公は世界を救うことができた。

テネットをまだ観ていない状態に脳みそを戻して、もう一度最初から見直してみたい…

そんな贅沢な望みすらも持つような。


製作費の回収は度外視しての順次公開に踏み切り。なんとかしてコロナ前の頃の、我々が映画館で映画を体験し、楽しみ、ワクワクしていたあの頃に…

もう時間を逆行することはできないけれども…過ぎ去ったことは元には戻らないけれども…

少しでも映画館に足を運んでくれる人が増えますように…テネットという映画作品は、そんなノーラン監督の祈りにも似た願いだと思いました。


なおドルビーシネマについて…

テネットはIMAX一択ですね。あくまで個人的な好みですが、音響は低音が効きすぎていて、画角はもちろんのこと上下が切れてて。もうドルシネでのテネットはいらないかな、という感じ。

ドルシネの強みのひとつに黒が際立つ色味という点がありますが、オペラハウスのシーンは黒が活きているように感じました。あと夜のムンバイとか。

ただこれは観た順番が明らかに悪かったのですが、レーザーGTのあとでドルシネを観たのでどうしても画角の狭さにより画面の魅力が失われてしまい。全てのシーンで物足りないなぁ、としか思えず。

テネットの鑑賞においてはIMAXがマストでありベストだと思います!




「メイキング・オブ・テネット」
クリストファー・ノーランの制作現場

6000円もしましたが購入して良かったですこれ。図鑑みたいな豪華な装丁、156ページフルカラー。

表紙をめくれば赤色で始まり、背表紙の裏は青で終わる。徹底的にこだわり抜かれたデザインです。

制作中は情報が漏れないように「メリーゴーラウンド」というタイトルで呼ばれていたそうです。様々な制作秘話、たくさんのメイキング写真、絵コンテ、設計図など。

情報量が凄まじすぎてもはや実質0円でした!





まだわからない複雑なところ…


①オペラでのテロ阻止は失敗ありきのテスト、とのことですが。死んでる人たちがいるけど、あれは壮大なドッキリ的なってこと?テロ→本当、CIAがテロを防ぐ→本当、テロを抑える作戦遂行能力があり、かつ仲間を裏切らない秘密を守る人物であるかどうかというテストが組み込まれていたということ?

→テロ組織=アルゴリズムを狙ったセイターの一味。キエフ警察=テロを制圧。CIA=警察の特殊警備官に扮してアルゴリズムを探しにきた。という三すくみ状態だったのかな??

→解説動画を観ると…テロの偽装はウクライナが計画したものとか、マジで複雑過ぎて理解できない…


②逆行弾を受けると致命傷になるのは、治癒の因果関係が逆になるから?被弾→細胞の破壊→細胞の回復→自然治癒というエントロピーが反転するから?

→逆行弾には放射線の逆放出が影響するのでは?と科学者のバーバラが発する台詞がありました。まだ解析中であり不明瞭な点が多い、というニュアンスでしたがここの影響により傷が回復できない可能性が考えられそうです。


③回転ドアは過去に行けるタイムマシンということ?何年の何月に行く、とかどう設定する?思いを込めれば行ける?例えば3日前に行きたいなら、3日間ちゃんと逆行しないと3日前にいけないはず…ハイウェイのあとでキャットを撃ったあと、回転ドアに入ったセイターが消えたように見えた流れがわからない…

→順行するために回転ドアを入った時は逆側から出てくる。逆行するために入った時は過去に遡るので逆側からは出てこない。なのでこの時のセイターは過去に逆行しに行ったので消えたように見えたのですね。


④セイターが癌になったのはスタルスク12で青年時代から集めていたプルトニウムでの被曝が原因?それともたまたま癌で死ぬ未来から逆算して、セイターが適任だと未来人に選ばれただけ?

→自分の過去を語るときに、アンドレイセイターは…って言ってたのであの殺してしまった同僚の名前がセイターで、契約書を自分のものにした、って解釈すると小悪党感が出ていいかなと思いました。


⑤最後の時間挟撃作戦で5分のタイミングで同時に順行組と逆行組がビルを破壊したのは何故?順行組は、注意を逸らせって主人公がアイブスに指示していたと思いますが、何から目を逸らす?逆行組がRPGを打ち込む意図がわからない…


⑥最後に死んで倒れていたニールが逆行で、代わりに被弾して主人公の命を救って、そのあと鍵を閉めてドアから外に出たように見えたのは…鍵を開けたのがニールだったからその逆行の動作?それで主人公とアイブスが閉じ込められた形になったおかげてニールが放り込んだロープを掴んで脱出することができた?


⑦プリヤが最後キャットの命を狙っていたのは何故?アルゴリズムの秘密を知っているテネット組織以外の一般人だから?あの携帯電話に残した留守電メッセージはどのようにして主人公のもとにたどり着いた?クラウドみたいなネットワークに音声が保存されている?


誰か教えてください…









以下、最初のレビュー。



スカイウォーカーの夜明けIMAXで鑑賞時、予告が流れたあと本作の冒頭映像6分強がそのまま流れました。

最初、タイトルも何も情報をくれないので、なんぞこれは?と思いながらぼーっと観る。


すると、隣でもぞもぞ…

見知らぬおじいちゃんがジャンパーを脱ぎたがっているけど、席に座ったままなのでむちゃくちゃ苦戦している。

あの狭いスペースで、座ったまま上着を脱ぐのってめっちゃ難しいんですよね。

ものっそいおじいちゃんが苦戦しているんで、お手伝いしましょうか?と声をかけ脱ぐのを手伝いました。

おじいちゃんって身体の稼働範囲が狭くなっちゃってるのもあって脱がすのがかなり難しくて、ちょっと腕引っ張りますよ、っておじいちゃんと一緒に苦戦しながら脱がせてあげました。

ありがとうねって言ってくれて、いえいえどういたしまして、とほっこりしながら、また本作の映像に目を向けて。


IMAX画角なのと、絵力と、銃声の音圧が凄いのと、車が回転しながら時間遡行している…

これは…もしや…

もしやクリストファーノーランのテネットでは!!!!??

ふと気付いてから死ぬほど興奮しました。もうノーラン作品って絵でわかるというか。これ絶対ノーランやんって思って。

まさかこんなに早く映像を観れるとは。
おじいちゃん助けてて、ほとんど見逃したけど!


ラストカットにTENET IMAX SHORT CUT TENET
みたいに出てきて、やっぱりTENETやんけー!!!って身体がビクンビクン痺れました…

なんかTENETって単語がひっくり返ってて…回文の単語になっている!タイトルのセンスがやっぱり神がかっている…

やっぱりノーラン最高やで…

あんた、一番大好きな映画の神様なんやで…

本日一番テンションが上がりました…


あと、スカイウォーカーの夜明け本編でほぼおじいちゃん寝てました。

公開翌日にわざわざIMAXに来るくらいなのに、このおじいちゃん寝てるやんー!!ってなりました。

IMAXメガネ着けながら寝てるおじいちゃんが可愛かったです🤪
がんがん

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