ShintaroOoooooo

TENET テネットのShintaroOooooooのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

絶対2回以上観た方が良い映画。

この映画を一言で表現するなら「共感しづらい『ドラえもん のび太の大魔境』」である。
ストーリー自体はシンプルで「のび太の大魔境」と同じく、伏線の正体が未来からの自分自身というオチである。
しかし、オチが分かってもなかなかアクションが難解で2回以上観たほうが絶対楽しい映画である。

ノーラン作品なので言うまでも無く演出は見事である。
同じシーンに順行する者と逆行する者を同時に描き、さらに逆行する者の視点でもう一度同じシーンを描く。
これにより散りばめられた点が線になっていく気持ち良さがある。
ただし、全ての点が1度鑑賞しただけで線にならないところがこの作品の難しいところだ。
というのも全体的に説明が少ないことが原因である。
説明が少ないこともあり映画に没頭できず飽きてしまうこともある。
映画館では途中退出する人や寝る人も多かったように思う。
私も1回目は上映時間を長く感じた。
それにもかかわらずちょっとした会話の中にも、2回目視聴者にとって思わずニヤニヤしてしまうところもあるので見逃せない。

共感しづらいところも問題だ。
主人公には名前が無く、「インセプション」では子どもとの再会という分かりやすい動機があったが、今作の主人公が何故行動するかが良く分からない。
特に世界の滅亡を阻止することはまだしも、キャットを救おうとする動機が何なのかは不十分だったと感じる人も多いと思う。

また、逆行している演出は確かに圧巻だが、過去作と比較してしまうと群を抜いて良かったというわけではない。
カーチェイスシーンは見事だったが、戦闘シーン自体は逆行しているから見応えがあったというわけではない。
どちらかというと「ああそうだったのか」という納得感を得られるシーンだ。
そういう意味では「インセプション」の無重力戦闘シーンや、街を折り畳む様子のほうが迫力がある。
逆行演出は難解にしてしまったという弊害のほうが大きいかもしれない。

しかし、それでも細かく見ていくと良さがにじみ出てくるスルメのような部分が多いのも今作の特徴であり、逆行演出ならではの部分だ。
特にダイエットコークのシーンでニールのにんまりする顔などは2回目以降の視聴者でしか感じられない良さがある(終わりを知っていると同時に悲しさも感じるシーンである)

映画鑑賞後に余韻に浸りながら眺めるワーナーの青いロゴ(冒頭は赤いロゴだった)からもノーランらしさが溢れ出ている。
間違いなく2020年の傑作の1本である。
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