とむ

TENET テネットのとむのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ノーランは相変わらず「映像でしか表現できない領域」に僕を連れて行ってくれる。

僕のオールタイムベストは、同監督の「インターステラー」なんだけど、
今作はインターステラーとはまた別軸というか、「どちらの方が面白い」「どちらの方が上」と評する気になれず、
そういう優劣が同じ監督の中で付けられないって本当に凄いことだと思うし、
その表現領域の凄まじさに身震いさせられるばかり。


初っ端のオペラホールのシーンから俗に言う「最初からクライマックス」状態で、
しかもそんなところにもサラッと伏線を入れてくるストーリーテリングの妙はもちろん、
もはやノーランのお家芸と化した「時間弄り」はもはや狂人の域に。
クライマックスの3つの「流れ」。
冷静に考えてどういう脳みそしてたらあのシークエンスを描けるんだ…。


また、CG嫌いで有名なノーラン節もやっぱり炸裂していて、
「名もなき男」が初めて「アレ」を使った時の「あ、世界でおれ一人だ」的な孤独感のある映像表現だったりとか、
逆再生と順再生を駆使したであろう双方向の時間軸の交わりだったりと、
映像イッパツにおける説得力がハンパじゃない。

あと空港の飛行機のシーンがこれまで見たどの空港パニックシーンより恐ろしく見えた。
飛行機が陸を滑走してるとこんなに怖ぇのか…っていう。
アレ、ダークナイトの病院のシーンよろしく本当にやってんのかな…。


個人的にすこしキャラクターの背景や歴史を描くのが薄いかなぁと思わないでもなかったけど、でもこの映画すごいのがそれら全てを「行間」で補ってるところ。
「名もなき男」とニールが最後に交わす会話で
「あぁ、ニールは死ぬとわかってて…」
「あぁ、この二人の『関係』はこれから十数年と続いていくんだろうな…」
「あぁ、名もなき男はこれからの人生をずっと『孤独』に生きていくのか…」
と色々な感想が脳みそをぐちゃぐちゃにかき乱して、最終的にはそれが涙として溢れた。


「映像でしかできないこと」なんて言い方したら、そんなもの「映画」って芸術それ自体がそもそもそういうもんだろと思うかもしれないけど、
ことクリストファー・ノーランにおいてはそれだけじゃない、映像表現の限界を命懸けで表現っていう領域まで達している気がするんだよな。

今後、どんなに辛いことがあっても、
ノーランが映画を撮り続けている限りは生きていこうと決意させられた一作でした。
とむ

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