Yoshishun

魔女見習いをさがしてのYoshishunのレビュー・感想・評価

魔女見習いをさがして(2020年製作の映画)
4.2
"誰しもが皆魔法使い"


拙者、おじゃ魔女未見侍。
そんな完全初心者な自分でも楽しめたのだから、単なるファンムービーではないことは明白。
また、個人的におじゃ魔女と聞くと、先日妙にSNSで流行ったインド人の姿が浮かんでくる。

本作はおじゃ魔女シリーズの正当なる続編……というわけではない。どれみやおんぷちゃんの活躍するファンタジーというより、彼女らに励まされ勇気付けられ、大人となった女性たちを描くロードムービーだ。言ってしまえば、かつておじゃ魔女を観ていた人々の物語でもあるのだ。ファンを描く作品というと、『ムカデ人間』位しか思い付かない。

発達障害の男の子とうまく接せず自身の教育者としての姿に悩む女子大生のソラ、周囲からエリートと嘲笑され勤め先に馴染めないでいるキャリアウーマンのミレ、密かな夢を抱きながら男と金に悩まされるフリーターのレイカ。住む世界も年齢も異なる彼女らの共通点は、おじゃ魔女ファンであるということ。ひょんなことからMAHO堂のモデルとなった廃墟で遭遇した三人が、それぞれの夢と悩みを共有しながら、人生を見つめ直す。

本作がおじゃ魔女の番外編でありながら、しっかりおじゃ魔女らしいユーモアとファンだからこそ作品からヒントを得ていき、本当に大切なものを分かち合う。魔法使いは、常に生まれもった才能や実力からくるものだけでなく、本作でいう誰かを動かす、自然と友達を作れるということも各々が持つ魔法そのものであり、ハリー・ポッターみたいな選らばれし者ではなく、誰もが皆魔法使いであることを強調している。この息苦しい世の中に向けた前向きなメッセージ性こそ、本作最大の見所である。

勿論、おじゃ魔女というか古風なギャグも連発するし、魔法玉も彼女らを繋ぐキーアイテムとしてうまく機能している。EDはおんぷちゃんによる歌唱で締め括られ、ファンサービスにも富んでいる。

クライマックスのMAHO堂での展開は急ぎ足気味かつ、やはりどうしてもどれみたちを登場させたいがための演出に見えなくもない。しかし、おじゃ魔女だろうが何だろうが、かつて何かに熱中した人々に突き刺す人生のヒント。完全に大人向けな内容だが、シリーズのファンでもファンじゃなくともオススメできる。
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