噛む力がまるでない

ラフィキ:ふたりの夢の噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

ラフィキ:ふたりの夢(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 ケニア共和国の青春映画で、レズビアンの二人を通して同国での性的マイノリティの生きにくさを痛感させる内容になっている。ケニアでは違法となっている同性愛を堅苦しくなく、カラフルにさわやかに描こうとするところに監督のあたたかな眼差しがある。

 個人的に、強制的に引き裂かれる二人の最後のやりとりがとても印象的だった。ジキが「2人で幸せな家庭を築けるとでも思った?」と聞くと、ケナは「思ったよ」と返す。そのあと、言い返せないジキの表情が長く映されるのだが、この無言の時間にこそ二人のやるせない想いが凝縮されている。ジキを立ち上がらせて彼女の顔を映さないのもキモで、この演出をラストでは反転させて喜ばしい再会へと変えているあたり、ドラマ演出のうまい監督だと思った。
 二人が典型的なケニア人女性としてのロールを当てはめられる苦しみはかなりリアルな話だとは感じる反面、脚本にはちょっと不満がある。ケナの父親やブラックスタなど、周囲の人々の描き方が微妙でケナたちとの距離感がいまいち掴みにくい。冒頭から腫れ物のように扱われてるゲイ男性の扱い方も中途半端だし、こういった人物をしっかり絡ませることで、よりケナとジキの成長に繋げられるはずだ。国や宗教が変わらないのであれば、変わるかも知れない市井の人々の描写にもうすこし工夫がほしいと思った。

 同性愛の理解へのハードルという意味で日本もまだまだ似たような状況であり、まったく他所の国の話ではないと感じながら見た。最後まで嫌味なあのおばさんみたいな人がいてもぜんぜんおかしくない。