小松屋たから

ラフィキ:ふたりの夢の小松屋たからのレビュー・感想・評価

ラフィキ:ふたりの夢(2018年製作の映画)
3.5
初めて観たケニアの映画。カンヌに出品されながら、国内では上映禁止だそうだ。なぜなら、テーマである同性愛がケニアでは違法だから…

正直、純粋に映画としてだけみれば、世界が注目!と謳われているほどの脚本の強さ、面白さは無いと思った。英語と現地語が混じり合う中、字幕翻訳にちょっと難があった気もするのだけれど、キャラクター造形もブレ気味で、カットの繋ぎも展開も荒い。

海外映画祭からの引き合いが強いらしく、批評家筋の評価も高いのは、命に係わるほどの相当な制作上の困難を乗り越えたこと、扱っている題材の深刻さ、ケニアの映画が珍しいことがその理由の大部分を占めていると思う。

ただ、衣装や髪型、街並みなど生活に直結している色彩の鮮やかさ、人々の暮らし、考え方、すべてが未知の刺激に満ちていた。また、演じ手の少女二人の様々な表情は本当に魅力的。「リアルになろう」、という二人の誓いは、胸を打つ。

二人の関係は、自分には同性愛というよりは、「余りに強過ぎる友情」のようにも感じたので、作り手は、国内でも上映できるぎりぎりの線を狙ったのかもしれないが、それでも禁止、ということはケニア国内ではLGBTへの理解度がかなり低いことがわかる。ただ、それぞれの国には、それぞれの歴史、信条があるし、ケニアに無知な自分が、西洋的価値観から一方的にその是非を論じることもできないな、とも思う。ただし、暴力、迫害、抑圧行為はどこの国であっても、絶対に排除されるべきだけれど。

スクリーンで、たまたまその日その時間に一緒になった人たちと、行ったことない国のまったく知らない人々の生活を観る。そして、様々な問題や人生を知る。映画館って、やっぱり凄いところだと思った。