スターウォーズ「ローグワン」に出演した事で、今まで以上に注目を浴びるようになったドニー・イェンが、実在の武術家イップ・マンを演じるシリーズの完結編。
実在の人物として登場するイップ・マンとブルース・リーを除く他の部分はほぼフィクションと思われ、その思い切りの良さがアクションとドラマ性に活かされているのが本シリーズの魅力。愛妻家であったイップ・マンが妻に先立たれ、本作では、反抗期を迎えた息子とのすれ違いと、息子の留学先となるアメリカに於ける中国人差別がテーマになっている。
イップ・マン親子と、アメリカで知り合った太極拳の達人ワンと、その娘。2組の親子を対比しながら描くドラマパートがとても秀逸だ。晩年の物語となっている為、アクションはややゆったりした物にシフトしているように感じるが、それも味になっている。
ただ、アメリカ軍人の描き方があまりにステレオタイプなのは頂けない。これまでの3作にも日本人やイギリス人に対する偏見が散見されたが、アクション中心の映画という事でさほど気にならなかった。しかし、今作は人種差別がテーマになっているのだから、アメリカ軍人だけ極端に差別主義者的に描くのは頂けない。作品本編で描かれるアメリカ軍人による差別と、本作の製作者によるアメリカ軍人に向けた偏見と、これではどっちもどっちである。
一連の戦いが終わった後のちょっとした台詞や行動で、イップ・マンの奥ゆかしさの如く後味の良い結末に持っていく事が出来たはずだ。しかし、それをやらないのは、残念ながら製作者の意図的なものであるのだろう。
アメリカ軍人の描き方を除けば、本当に素晴らしい作品であった。
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