てでぃはる

イップ・マン 完結のてでぃはるのレビュー・感想・評価

イップ・マン 完結(2019年製作の映画)
4.2
ありがとうイップマン!
私がドニーさんの作品で初めて観たのがイップマンの一作目で、何よりそれまで格闘アクション映画をほとんど観たことがなく、ブルースリーやジャッキーの映画すらも全くと言って良いほど知りませんでした。そんな私にとってイップ師父の詠春拳は衝撃で、人間の身体はこんなに美しい動きが出来るのかと一瞬で心を奪われました。それ以降、リー先生の『燃えよドラゴン』や『スパルタンX』や『プロジェクトA』など数々のジャッキー映画。イコウワイスの『ザレイド』やトニージャーの『マッハ』に『トムヤムクン』その他にも数えきれないほどの格闘アクション映画を観るようになりました。ですから格闘アクションの楽しさを最初に教えてくれたこのイップマンは自分にとって大切なシリーズなんです。今回はありがたい事にオンライン試写の機会を頂き、一足早く観させて頂きましたが、ラストを飾るのに相応しい一作となったと思います。
息子にアメリカの学校に通わせたいと考えたイップマンは単身手続きの為にサンフランシスコに渡ります。そこで弟子であるブルースリーとの再会や中華総会の会長であるワンとの対峙を経て、最期に海兵隊の軍曹であるバートンとの死闘に挑む事になります。
イップマンの最期の敵バートンを演じるのは最強のアクションスター、スコットアドキンス。知らない人はいないと思いますが、もし彼のアクションを観たことがない人は『デッドロック』シリーズを観てみてください。人間を辞めたであろう人智を超えたアクションが観られます。相手にとって不足無し。スコットアドキンスはまるで『フルメタルジャケット』のハートマン軍曹のような出立で登場し、その威圧感の凄さたるや半端ではありません。ドニーイェンとスコットアドキンスという世界トップレベルのアクションスターのぶつかり合いはもはや芸術の域に到達していたと思います。その他にもブルースリーのジークンドーやウーユエ演じる太極拳の達人ワンとイップマンの闘いなど見応え抜群。アクションのクオリティに関してはなんの心配もありません。圧倒的な安心感があります。
そして、このイップマンというシリーズはアクションだけが見どころではありません。ドラマこそが最大の魅力といってもいいかもしれません。三作目では妻であるウィンシンとの最期が描かれましたが、本作では父親としてのイップマンがテーマになっています。武術家としては一流でも、反抗期真っ盛りの息子とは中々上手く行かない。不器用な父親が不器用な息子に木人椿の打ち方を教えるラストシーンはとても美しく、つい涙をこぼしてしまいました。
本作のイップ師父はウィンシンを亡くし息子とも上手くいかないうえに、癌を患っており、終始寂しい背中をしている印象です。しかしながら最期の戦場に向かう姿は武術家としての誇り、そして中華人としての誇りを持ち、自信に満ちていて私の大好きな最高に美しいイップマンの姿そのものでした。10年以上も続いたシリーズが終わってしまうのは寂しいですが、このシリーズのDNAは確実に次世代の数々の作品に継承されていくでしょう。ひとまずお疲れ様でした。そして今後もドニーさんの活躍を楽しみにしています。