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アウシュヴィッツの女囚のkyoyababaのレビュー・感想・評価

アウシュヴィッツの女囚(1948年製作の映画)
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原題 "Ostatni Etap" は英語で "The last stage" であり、主人公のアウシュビッツ収容所からの脱走を試みた女性の結末を示唆している。国内での流通がオンライン配信も含めてまったく発見されるに至らず、 raremoviesandmore.com という怪しげなサイトで英語字幕版のDVD-Rの販売を漸く見つけ鑑賞できた。

男性>女性、ナチス>囚人、収容所の監督者>収容所の被監督者、という多重構造での上下関係が対比的に連綿と描かれるなかで、いかに女性囚人たちが過酷かつ凄惨な、人格を持つ個として扱われない状況であったかが多少のドラマ性も含めつつ描かれる。

「歌を口ずさんでいた」だけで見せしめに銃殺される女性を始め、とにかく救いがない。これが映画的演出によるものなのか、脚色の有無は幾らかの文献を当たる必要がありそうだが、少なくとも監督の Wanda Jakubowska は実際にアウシュビッツに収容されていたということで、チェーホフやトルストイの時代以前からロシア・東欧で語り継がれている《どんなに悲惨な状況でも生き抜くことを諦めてはいけない》という警句を髣髴とさせる。

いずれにしろ、ナチス・ドイツの崩壊から2〜3年しか経過していない当時にリリースされた映画として、金字塔的存在であることは間違いない。
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