せーじ

ひとよのせーじのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.5
242本目はTOHOシネマズ新宿で鑑賞。
金曜日午後の回で小さめな劇場ながらも、客席はほぼ満席。客層も幅広い年代の人々が来ていたように思います。

色の抜けきった茶髪の松岡茉優さんが「お母さんはあの人から私たちを助けてくれたんじゃんっ!」と叫ぶ予告が印象的だった本作。
我らが松岡茉優さんの他に、るろ剣の佐藤健さん、西郷どんの鈴木亮平さん、そして朝ドラレジェンドの田中裕子さんらが出演すると知り、観ない訳にはいくまいなと思い、初日に鑑賞をしてきました。

うん、まおも(まぁまぁ面白い:©Marikuriさん)かな。
まぁまぁ、そこそこ、よく出来ていると思います(1時間ぶり2回目)

良かったところ。
まぁまずは、役者陣の演技の応酬ですよね。
特に主演格の四人の演技は、本当に素晴らしかったです。
佐藤健さんの尖っているけどルーズな感じは、独特な色気があってカッコ良かったですし、鈴木亮平さんの役柄は彼のパブリックイメージとかけ離れていて凄い演技をするなと思いました。もちろん我らが松岡茉優さんの演技が素晴らしいのは言わずもがな。そしてその三人を優しく見守る田中裕子さんの存在感がラスボス過ぎて、もうこれは神々の饗宴に近い感じですよね。あのキャバクラに行きたいですし、あのタクシー会社で働きたくなりますもん。松岡さんに吐かれたりしたら困るけど。
脇を固める役者さん達も、悪くなかったと思います。筒井真理子さんとか浅利陽介さんとか。独特なグルーヴが形成されていたような。

ただですねぇ…
この話って、どちらかというとリアルでシリアスな方向の話なのではないだろうかと思うんですけど、ちょいちょい白石監督作品特有の下世話でフィクショナルな描写が挟まれていて、作品全体のノリが悪い意味でアンバランスになっている様な気がしてならなかったのです。

いちばん個人的に違和感を感じたのが、佐々木蔵之介さんが演じる新人ドライバーの彼まわりのシーケンスでした。序盤はともかくとして、中盤から後半にかけて、彼について"いわゆる北野映画的なギミック"が明かされていくのですが、それがメインの四人にまつわる話とトーンが全く合っていないんですよね。もっとも下世話な描写自体は自分も嫌いでは無くて、松岡茉優さんが田舎の酔っ払ったキャバ嬢を演じている場面とか、ちょいちょい関係者による濡れ場が挟まれたりだとか、デラべっぴんの使い方とかくらいまでは許容範囲だったんですけど、佐々木蔵之介さんのそれらは明らかに本筋から逸脱していた内容だったので、観ていてビックリしてしまいました。そういうのはもうちょっと考えた方がいいんじゃないかなと思うんですけどねぇ。。。
加えて、事件後から現在まで子供たち三人に起きたことが、きちんと説明されているようで、割とふんわりとしていたのもちょっと気になってしまいました。妻や娘を省みないと言ってもねぇ…ライターから小説家になると言ってもねぇ…美容師の夢を諦めたと言ってもねぇ…
そもそもあの日、三人ともあんなにボロボロだったのに、警察に相談しない、出来ないというロジックが無かったり、なのに子供たちだけでタクシーを運転できてしまったりだとか、母親と父親の関係性が描かれていなかったりなどなど、シリアスな内容を語ろうとする割にそのあたりのディテールが意外とお留守になってしまっていて、ちょっとなぁ…と思ってしまいます。おかげでいつ佐々木蔵之介さんが「孤狼の血」ばりなバイオレンスアクションを炸裂させるのかという変なヒリヒリを感じてしまったりして、中盤以降は変な笑いをこらえるのに必死で、あまり内容が頭に入ってこなかったです。

※※

フォローをしておくと、「親」と「子」の立場を対比させる終盤のプロットそのものは悪くは無かったんじゃないかなと思います。ただ、全体的にそれを茶化しすぎで、ルーズな空気が薄~く流れており、この話が本来持ち合わせているはずのコンセプトとは合っていないのではないだろうかと思ってしまいました。もっとガチガチに重苦しい作風でも良かったのになぁ…と思います。
とはいえ、この座組で再度別の作品がつくられることは無いでしょうから、神々の饗宴を楽しむという意味では、一見の価値はあるとはいえるのではないでしょうか。