富田健裕

ひとよの富田健裕のレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
4.3
試されているような気分になった。

お前は、人として大切なモノを持っているのか、と。
信頼とも許容とも総じる事の出来ない何か。
それが何なのかぱっと出て来ないのが悔しいのだけど。
愛やら何やら等という構えた言葉ではなくて、何だかもっと異形で、不安定で、でも確実に持ち得る必要のある何かしらの感覚。
もし人間が人間である事に免許がいるのならば絶対条件になるだろう、何か。
それを、どれだけの人が携えているだろうか。
自分は、携えているだろうか。

もし、自分にとって大切な存在があの母の立場であったら。
自分は、あの三人兄妹の誰に当たるだろう。
理想とする立場は誰になるだろう。
現実的な立場は誰になるだろう。

誰もが誰かに己を置き換える事が出来るだろう。
それは家族という内的な人間たちだけに関わらず、音尾琢真や佐々木蔵之介といった外的な人物たちに対しても然り。

あの一夜を経た人間たちが問うてくる、人よ。
苦渋と滑稽が交じり合った混沌の中で、答えを探そうと動き出すことが出来るか。

はたして自分は人間に成れているか。
富田健裕

富田健裕