NEWおっさん

ひとよのNEWおっさんのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.0
「母さんは母さんだよ」

桑原裕子が主宰する「劇団KAKUTA」が2011年に初演した舞台を白石和彌監督が映画化。父を殺した母が15年振りに子供達の前に姿を表す。

テーマ的には重いんだが、見終わった後そこまで重く感じなかったのは根本的に悪い人がいなかったかだろうか。3人の兄弟もそれぞれに葛藤抱えつつも母に対する想いは強く、反発しながらも最終的には和解していく。まあ松岡茉優だけは最初から母LOVEだったけど。犯罪者の烙印が押されているが息子達に会いたい一心で帰って来た母親という難しい役とごろを演じた田中裕子は素晴らしい。田中裕子じゃないと撮れないとスケジュール合わせるのを待ち続けた監督のこだわりが分かる。

タクシー会社の面々もキャストのメタ視点的になんか裏があるだろと思ったけどそんなことなく、皆基本的に良い人。佐々木蔵之介だけは事件に絡むキーキャラなんでちょっと次元が違うが。終盤はギャグなのかと思った。

ドラマとしては及第点だが、正直あまりのめり込めなかった。前述でも言ったとおり、終盤は家族を和解させる為に無理矢理ああいう展開にしたのかと言う程唐突に事件が起きる。母親もなんでホイホイ車に乗ったのかも分からん。しかもあの事件だけでここまでアッサリ和解するもんかね。もっと細かい点で言えばあんなに嫌がらせを長年受けてたのにこのタクシー会社は経営的に大丈夫なのかとか、セックスシーンも必然性皆無で後に響くわけでも全く無いのに無駄に入れたかっただけだろとか、色々気になるトコは少なからずあったなあ。

いつものバイオレンスさは鳴りを潜めて真っ当な家族ドラマを撮ったが、それ故に色々綻びが出てしまったという印象。白石作品では間口が広い方だが自分はこの監督にはもっとエネルギッシュを求めてしまうなあ。