“映画の覇気までは殺さなくて良い”
ジムジャームッシュ×ゾンビ映画。自分はジャームッシュ映画もゾンビ映画も好きだ。ゆえに双方の弱点も知っている。今回はその悪い点の塊みたいになって、オフビート過ぎ、単調過ぎ、退屈過ぎな超お昼寝用映画になってしまったように感じた。実際自分は半分以上寝てしまったし、上映後にあくびしてる人が15%はいた。
田舎のお墓からゾンビが出現して、徐々にパンデミックが起こる。ビルマーレイ、アダムドライバー、レニーセルヴィガー主人公警官チームがサバイバルに巻き込まれる。そこに謎の剣術使いティルダウィンストンが加勢する…というのが大筋の流れ、パーティー編成。
豪華スターの共演、という売りを取り除いてしまうと、マジで出来の悪い何のトライも驚きもない古臭いB級映画。
決して出来の良くないシナリオをちゃんと成立させようとするから、ジャームッシュのユーモアやカッコいい名台詞の入るスペースや抑揚がほぼ感じられない。クスッと笑えるジャブが何個かあるのが精いっぱい。どう贔屓目にみても痛快や爆笑ポイントも皆無だった。
ただすっごい映画マニアなら爆笑ポイントあったかも。
ゾンビがひと言呟くのに一瞬ひらめきを感じたけど、なんかどのフレーズもサムかった。
全体的にキャラクター達の生きるための頑張りが希薄だし、ガッツが無い。
元々オフビートがジャームッシュ映画の魅力の一つではある。ただ、ゾンビ映画をやるからにももっと振り切ってもらわないとダメだ。
ゾンビセオリーやシナリオバランスを徹底無視したジャームッシュの言葉や哲学を見せるか、ゾンビセオリーの中にジャームッシュアプローチをもっとしっかり仕掛けてくるか、このどちらかじゃないと本作は面白くならなかったと思う。だから振り切った何かが産まれなかったと思う。
なぜ、ゾンビという何でもありのフィールドで萎縮してしまったのか。
せめてモノクロ映画にするだけで何かが変わったかも、ビルマーレイに掃除機持たせてゾンビを吸引すれば何かが変わったかも(まあ、これは違う監督だけど)。ゾンビが襲うのに疲れてコーヒーブレイクするシーンとか入れれば何かが変わったかも。
とにかく、自分は本作に一ミリも感動しなかった。
以上。当然このレビューは自分個人の好みの押し付けですが、間違いなくいえるのは『ナイトオンザプラネット』『ブロークンフラワーズ』的なジャームッシュはこの映画にはいないです。お気を付けください。