ペジオ

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのペジオのレビュー・感想・評価

4.1
公式が解釈違い

翻訳とは詰まるところ翻訳者の作品に対する「解釈」である
僕もレビューを書くときは自分なりに映画を噛み砕いて翻訳するよう努めているつもりである

まだ見ぬ傑作を「人質」にしたという「解釈」をすれば、犯人探しよりも駆け引きを楽しむタイプのミステリーなんだと思う
実際本作は「フーダニット」から「ハウダニット」、更には「ホワイダニット」へと至る基本的なミステリーの謎解きの過程を踏みながら、映画の実相をも変容していた様な印象がある
翻訳者という創作の一端を担う人々と、完成品を卸すだけの「出版マフィア」との闘い…という構図が浮かび上がるのは胸熱
『デダリュス』を…いや「創作物」を一つの「キャラクター」として映画を観たとき、「作品」と「商品」という「解釈違い」が元で事件に発展したのだ…と考えると、そこに一番異を唱えたものこそが「一番めんどくさいファン」なのかも…と考えると犯人の正体もなんだか示唆的である(デダリュスはそんな事言わない。)
…と妄想を捗らせていたら、真の動機はとてもシンプルなものだったりするから驚いた
え~?私の解釈と違うんですけど~…

オルガ・キュリレンコの「推し」と同一化するようなヤベえファンの感じとか、言語と解釈の関係性とか、そもそも翻訳者が創作という行為の枠内で担う部分ってどれぐらい?とかもっと色々描けた様な気はするが、エンタメとしては適切な尺で十二分に面白い(描いて欲しかった部分は僕の妄想という「二次創作」で補完しておこう。)
クライマックスでのキャラクターの動かし方もテンポ重視で楽しい

汚れ仕事やってそうな人たちのプロ意識と葛藤がサラッと描かれていてカッコイイ
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