はちみつ小町

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのはちみつ小町のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

久々に展開が読めない映画を見た。脚本の構成も時間軸が翻訳を行う屋敷と刑務所で分けられており、エリックの怒りに引きずられる。

「文学の精神を尊び、その世界観を理解する教養ある作品に仕上げるか」「売れる本にするか」という対立軸が2種類の2人の間を行ったり来たりして、事件が始まる。(それがラストシーンで分かる。)

映画自体は、翻訳家達が集められたお屋敷のシーンからいきなり刑務所に切り替わり、犯人に向けられてのエリックの独白が始まる。結構色々と喋ってくれるけれど、カメラが切り替わる(映画中盤)までそれが誰なのか予測は不可能。

登場人物について。世界的なベストセラーの翻訳ということもあり、それなりに実績のある翻訳家が集められる中、1人だけ若いアレックス。9人の登場人物の中で1番セリフが多く、翻訳家達に必要な本を配るなど、周囲よりも作品を深く理解している様子が伺われ(結果は伏線なのだけれど)謎が深まり、引き込まれる。

犯人自白後のカオスで死者や撃たれる人間が出た事で完全犯罪でなくなるけれど、ここも1つの転換点だと後で分かる。エリックとアレックスの刑務所での会話(無音声状態)の時に、アレックスが語る計画の全体像が兎に角、圧巻。

ラスト、刑務所からの帰り道に立ち止まり、どこに行けば良いのか分からなくなったアレックスもまた、エリック同様作品に捕らわれたのだと思う。