Bluegene

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのBluegeneのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

世界的ベストセラーの完結編の出版を控え、各国語版も世界同時発売を目論む出版社社長は、リーク対策のため9か国語の翻訳者をカンヅメにしていっせいに作業させることにする。だがその最中に冒頭部分がネット上に流出。それ以上の流出を止めたければ金を振り込むようにという脅迫メールが届く。

時間が行ったり来たりする作品だが、とりあえず脅迫事件は落着して逮捕者も出たとわかる。最初は「誰がリークしたのか?」「どうやって原稿を手に入れたのか?」という点に焦点が当たるんだが、そこは途中で種明かしされ、「なぜやったのか?」へとシフトしていく。

その展開はうまいと思うんだけど、犯人のアレックスは脅迫騒ぎの中で自殺者が出てもしらを切ったり、経済的に恵まれていない翻訳者たちを唆して共犯に引き込んだりしてるわけで、彼の動機に今ひとつ共感できないんである。堕落した売らんかな主義の出版社に鉄槌を下してやるう!て正義感が一方的すぎますし。逆にエリックがあまりにテンプレな金の亡者に描かれてるのも単純化しすぎ。

ところでこの「翻訳家を地下室に隔離して作業させる」というのは、ダン・ブラウンの「インフェルノ」で実際に取られた措置をモデルにしたのだそうだ。作者の名前が「ブラック」なのはそのほのめかしだったんだな。彼のベストセラーが中身すっからかんな商業主義の権化であることを考えると、ブラックの隠れ蓑のジョルジュが無残に殺されるのは皮肉が効きすぎだと思う。

追記。
プロットホールでは?て感じた点があって今もモヤッとしてるので書いておく。

アレックスは執拗に「作者のブラックに会いたい」と要求する。これは熱心なファンだからではなく、エリックにはそれができないとわかってる=ジョルジュの死を知ってるから、だったからだろう。つまり慕っていたジョルジュの死を解明しようというのがアレックスの動機だと思うんだけど、どうも辻褄が合わないんだよね。
⑴そもそもアレックスは彼の死をどうやって知ったのか?南仏の小さな書店の火事がロンドンで報じられるとは思えないし、頻繁にやりとりしてたような描写もない。
⑵なんらかの経緯で知ったとして、エリックが関わっていると疑った理由は?あの状況では事故死としか見えなかったと思うのだが。
⑶ジョルジュの死から翻訳開始までそんなに時間があったとは思えないんだけど、計画を実行するには短すぎるのでは?
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