rollin

ぼくらの7日間戦争のrollinのレビュー・感想・評価

ぼくらの7日間戦争(2019年製作の映画)
1.5
ぼくらの七日間戦争やってみた

15年近く前に細田守がやった革新的換骨奪胎アプローチを、ほぼ水のカルピスくらい薄い仕上がりでお届けする何匹目かのドジョウ作品。

主要キャラクターは、フリー素材から引っ張ってきたかのようなテンプレ具合で、全員モブ!!百合への配慮とヅラへの配慮のなさには正直引きました。
背景作画は所々美しいカットもあったけど、全体的にのっぺりとした人物のアニメーション部分は観ていて何の面白味もない。物語舞台の大部分を占める廃工場?みたいな場所も、ロケーションとして魅力が皆無。

スマホ&大SNS&個人主義の時代に、ドラえもんなしで集まって物理的籠城戦をやる必要性とは?だから昨今の′80sリバイバルブームが起こってるんでしょ?結局そこに対する真摯な回答はなく、リアリティも、リアルな感情も、土埃や脂汗に汚れることもない。アニメーション作品として迷子だった。

思うところがあるので少々御託を並べます。
かつてトリュフォーやケビン・ベーコン、リチャード・ドナーらが仕掛けた、“判ってくれない大人たちとの戦い”を、極東島国のバブルという経済的モラトリアムに重ねて象徴化したのが原作の立ち位置だと思う。そこには吉本新喜劇の池乃めだか的虚勢に似た無邪気さがあったんだけど、やがて訪れたバブルの崩壊と決定的な少年犯罪、そして「Air/まごころを君に」による強制的総括によって、そのテーマは完全に沈黙し、インターネットの発達という人類補完計画も発動してしまった。
だからこそ、細田守がウォーゲームを経て、「時かけ」という少年少女だけの密室作品を発表したことにはとても大きな意義があったし、庵野秀明も大人との戦いから視点を移行させる新劇場版の潮流を感じ取ったんだと思う。「打ち上げ花火〜」には何の意義もなかった。

で、本作の立ち位置はどうかと言うと、そんな文脈関係なしの「打ち上げ花火〜」路線な訳です。
現代的解釈として、SNSやポリコレ配慮といった要素をくそ安易に取り入れてますけど、ぼくらの七日間戦争を今やる意味ってそういうことじゃないんだよね。逆に今「天気の子」を作れる新海誠ってやっぱ凄いんだぁ。

おかげさまで1クールを神クオリティで乗り切る日本の歴戦アニメ製作会社の凄まじさに改めて敬意を抱くことが出来ました。ありがとう。
rollin

rollin