ねまる

TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」のねまるのレビュー・感想・評価

4.2
他に類を見ない、圧倒的な実力と存在感がある俳優さんだと認識している、
彼の5年間。
いいや、1人の人間の5年間。

役者としての山田孝之は、完成したものを観ているより、さらに何億倍も深くて、なんか役作りを聞いているだけで、なんだか泣けてくるほど。

もっと私を泣かせたのは、プロデューサーに挑戦する話。
自分が新しいことに挑戦することで、10年20年後の日本映画がもっと世界に誇れるものになっていて欲しい、そんな強い想いを語りながらも、役者としての自分と向き合うこととなる。

たとえプロデューサーになっても、偶像として"山田孝之"という商品が消費されていく感覚。
自嘲するように笑いながら、久々に死にたいと思った、なんていう姿を涙なしにどう観ればいいの?

何年撮るかも、どう発表するかも決まっていなかったこの作品を、
このタイミングで出すと決めたのは、間違いなく安藤政信の存在であったと思う。

彼に出演を依頼するため、バーの中で、
自分の想いを、このドキュメンタリーに映っていた想いを、自分の言葉で憧れの安藤政信に喋って伝える。
その空間では、まるで1人の子供のように大好きな人に自分の想いや大好きだという気持ちを伝えているかのようで、
その言葉を受け止められる唯一の存在が彼だったのだと思う。

そして、心が荒みかけた山田孝之に対して、役者の仕事としてその想いに応えた安藤政信の演技。
翌日のバス、その演技を観たことで、死にたいとまで荒んでいたのに、素直に嬉しそうに役者の仕事が誇りだと話す山田孝之の本物の笑顔に、心が動かされて仕方ない。

"楽しむために、楽をしない。"
生きなくちゃいけないから、何とかして楽しまないと。
暴れるように、もがくように、色んなことに挑戦し続け、楽しみ続ける男。
頑張るしかない道を選んでしまった男。

彼だけの人生論は、自分の価値観に少しのスパイスを加えてくれた気がした。

よーし、頑張ろう。
ねまる

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