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サスペリア PART2 完全版のshxtpieのレビュー・感想・評価

サスペリア PART2 完全版(1975年製作の映画)
3.5
Prime Video のレンタルにないと思ってわざわざ DVD を借りてきたのに、いま見たらあった。 HD で見たかった……。

それはともかくとして、ひさしぶりに見たら、冒頭のマーシャ・メリルの殺害シーンやあの有名なトリック以外、ほとんど内容を忘れてしまっていた。こんな話しだっけ? 『サスペリア2』を、今更「新作」として見るはめになるとは……。

日本では『サスペリア Part 2 』という屈辱的なタイトルを冠されているが、この『プロフォンド・ロッソ』が『サスペリア2』ではない(しかも、『サスペリア』よりも前に製作、公開されている)ことは、その筋では常識のようなこととして知られている。映画としても、ホラーというよりはミステリー、サスペンス、スリラーなのだが、とにかくサディズムが爆発した、めちゃくちゃいやな感じの殺害シークエンスが「見どころ」として差し出されていて、どれも先駆的かつおそろしく、おぞましく、たとえば、デイヴィッド・クローネンバーグがこの映画から影響を受けたというのも納得である(『スキャナーズ』のあの有名なシーンは、『プロフォンド・ロッソ』の冒頭へのオマージュ)。「ひとをいかに殺すか」ということに、 100 パーセントの力が注がれている。「どうしてこんなことを思いつくの?」というダリオ・アルジェントの発想力、奇想の力、あっぱれだ。

カメラワークや映像、編集もすごく異様で、まったく意味のわからない闘犬のインサートが差し込まれるところなど、不可解で理解不能(そもそも、あの有名な人形も、まったく意味をなしておらず、脈絡がない)。とはいえ、そういうところに、鈴木清順の映画のようなえも言われぬパワーを感じる。冒頭のカットの左側の柱とか、おかしな影が画面を覆っているショットが多く、ぐいぐい動くカメラとか、やけに引いた画とか、「なんでそう撮ったの?」というショットも多い。冒頭の、子どもの足もとにナイフが転がる画は絵画的で強烈。

合っているのか合っていないのかよくわからないものの、とんでもなく印象に残るゴブリンの音楽もまた強烈で、特にあのテーマソングや「子守唄」、 “School at Night” (作曲はジョルジオ・ガスリーニ)軽快で無垢だからこそのいやな感じは代えがたい魅力がある。

アフレコであるがゆえの変な感じとか、赤すぎる血糊とか、ダリア・ニコロディやエロス・バーニのふざけた感じ、腕相撲をめぐって小競り合いするしょうもないシークエンスなどの、なんとも言えない間の抜けたユーモアなどが残酷シーンとの対比で、見ている者をずっこけさせる。

当時、イタリアでも流行っていたのだろうか。精神分析ネタがでてくる。デイヴィッド・ヘミングスが語る男尊女卑的、ミソジニー的な価値観はやばすぎる。
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