喜連川風連

わたしは光をにぎっているの喜連川風連のレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
4.0
自分の大好きだった居場所や人たちが後ろに下がっていく感覚を味わった。

傷つかないように人と距離置いて孤独でそれって幸せ?
立退料もらって高級マンションでいい暮らししても幸せ?
そうとは言わないが、ひとつひとつ暗示してくるのが全力で刺さってくる。

内気で自分を出せずにぶつからずに閉じこもる女の子が主人公。
自分の内なる世界に閉じこもりながらも、対話を通して傷つきながら日常や生活を積み重ねていく。

同じ湯屋と少女という構造は千と千尋の神隠しを思わせる。
かと思いきや、暖かい商店街ムービーとしても素晴らしい。
最後、立石の商店街の人々が笑顔でカットバックされるシーン。
ここだけを切り取ればなんてことないシーンだが、これまでの彼らの生活を見たあとだと胸が締めつけられる。

合理性だけでいいのか?震災対策と思えば仕方ないのか?

カットの美しさとかけがえのない居場所の喪失、を想い泣いてしまった。

それを彩るように大切なセリフが節々に散りばめていて胸を締め付ける。
「まずひとつずつ、自分にできることから一歩一歩やっていく。それからだよ」

「言葉は発したいときに、発したいように降りてくる。それまで待てばいい」

どうやったらこんな脚本と絵が描けるのか。自分の才能の無さにあわせて絶望し、涙した。

最後、エンドロールで流れるスペシャルサンクスからも暖かみを感じた。

色々な人に支えられ、そして観た人を救う映画。自分にこんなものが撮れるのだろうか?嫉妬と涙に悶え死んだ。
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