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わたしは光をにぎっているのkeitoesのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
4.5
銭湯×松本穂香

もう字面だけで名作だ

がんばれ松本で、意識高すぎ高杉くんのクラスメイトの松本さん

そんな松本穂香が演じるのは、目的もなく上京し、居候先の知り合いの銭湯で手伝いをしながら生きていく20歳の女の子

あらすじの時点でも名作だ

キャスティングが完璧過ぎて、本当に完成度の高い作品になっていたと思った

彼女は現代っ子のように、基本的に無気力で感情を表に出さない
でも譲れないところは決して譲らない頑固なところもあって、それが松本穂香が素で演じているみたいに感じられる

亡き両親の代わりに育ての親であった祖母の入院をきっかけに、長野から単身上京をし、父の親友だった銭湯を経営する中年のおじさんの家に居候をする

そのおじさんも何だか素っ気なくて、都会に馴染めずにいる主人公

祖母から電話でアドバイスを受けて、目の前のことから頑張ってみようと決意した彼女は、銭湯の手伝いから始めてみることに

おじさんとも徐々に打ち解け、銭湯に通う常連たちと仲良くなり、映画監督を目指す青年や不倫をしている女性、街のエチオピア人たちなど、様々な人と触れ合い、少しずつ東京の生活が楽しなっていく

けれど、そんな中、再開発のせいで銭湯が閉店さざるを得ない状況だと知る彼女

彼女のとる行動はーー
みたいなストーリー

話の流れは、なんて事のないあるあるなストーリーかもしれないし、事件は何も起きない
でも脚本が秀逸で、バランスの良い抑揚があって、感情を徐々に揺さぶってくれて、確実に共感ができるものになっている

綺麗な銭湯に入った時に、身体だけじゃなくて、何となく心も落ち着いた感じになるような、綺麗な感情を得ることができた

音楽も映像の美しさも相まって、完璧に作品を高めている
そこに松本穂香の演技が加わって、唯一無二の、はかなくて眩しい映画になっていた

便利さとヒトの温かみ
暮らしていると天秤にかけることは出来なくなってしまうけれど、今自分が生活している地域や商店街が、何となく愛しくなって、歩きスマホをやめて、顔を上げながら歩きたくなった
元々、歩きスマホはダメなんだけど

銭湯に入って、帰り道の肉屋で揚げたてのコロッケ、コンビニで買った缶ビールを片手にゆっくり家に帰りたい




2020になってから、もう一回観ましたがやっぱり素晴らしかった
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