わたしは光をにぎっているの作品情報・感想・評価

上映館(14館)

「わたしは光をにぎっている」に投稿された感想・評価

S

Sの感想・評価

4.5
filmarks試写会にて。
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』、『四月の永い夢』の中川龍太郎監督の新作。
もっと若いと思っていたら、もう29歳になられていた。2014年にTIFFで上映された『愛の小さな歴史』の時は24歳くらいだったし、実生活で大切なご友人を亡くされた過去を基に作られた『走れ、絶望に〜』は、当時やり場のない感情がぐるぐると頭の中を渦巻き、先のことを考えるのも今この瞬間と向き合うのも嫌、そんな状況にいた私をまさに「しゃんと」させてくれた衝撃の映画だった。

そんな中川監督の新作、『わたしは光をにぎっている』のタイトルは山村暮鳥の詩集「梢の巣にて」より。中川監督自身、元々詩人から映画監督へ転身されているので今作でもその語られる「詩」は野尻湖の美しい映像と共に、言葉としての強い印象を残していく。

商店街の再開発による立ち退き問題等、身近な社会問題をテーマに置く本作の主人公は松本穂香ではない。全体を通して引きや俯瞰のショットが多く、彼女がいる街、そこにいる人、全部ひっくるめた風景そのものがこの映画の主人公だ。

物語は地元・長野県の野尻湖での日々と、下宿先の銭湯のある東京での日々を行き来する。どちらにも共通して彼女の身近に存在する「水」。銭湯の手入れをする彼女の水の扱い方はとても優しく丁寧で、水たちは彼女の手の中できらきらと光り揺れ動く。

上京初日のはじめての銭湯で、天井の角辺りを眺めながら、「あ、あ」と声を発するシーンがある。自分という存在と、建物の生存を確かめるかのような、「呼吸をしていること」を確認する儀式。全体で見たらなんて事のないシーンかもしれないけれど、彼女の人柄が滲み出る、とても優しい場面だったと思う。

初めは松本穂香のうんともすんとも言わない、おっとりしすぎた感じが生理的に無理だったけれど、銭湯での覗き見おじさんに対して荒げた声をあげたときはこんなでかい声出るんかい!とびっくりしたし、少し仲良くなった友達が不倫を開き直って肯定していることに対しても、その表情にはわかりやすく怒りと軽蔑の念が滲み出ていた。
人は育った環境、出会う人によって形成される部分がとても大きい。
彼女はきっととても素直で周りに流されず、だめなことはだめだと、自分のものさしをちゃんと持っている人だ。
彼女が過ごしてきた野尻湖での暮らしを思い返せば、なんとなくそれが分かるような気がした。

人と街のつながり、私たちの居場所、みんなのホーム。
終わり方をどうするか。
行き場のない人たちをどこへ向かわせるか。
「しゃんとしよう」と思った彼女が心に決めて取った行動。その場所を、その場所にいる人たちを、水を、亡くなった命を、生きている命を、自分の身近な人やモノを大切に愛する彼女だからこその終わらせ方に、優しい涙がポロポロとこぼれ落ちた。
いつかに経験した、自分の胸が高なった想いや、衝動に駆られて行動した時の感情。
これから先、忘れたくない、あの時、感じた一筋の光。
時折、あの時感じた思いを私は分からなくなっていないか不安になる。

自分の思いを口にできなかった澪がおばあちゃんの言葉を復唱する様に、詩を読む様に、だんだんと自分の感情を掴める様になっていった。

澪が少しずつ成長していけたのも、おばあちゃんや銭湯の男、周りの人達が暖かく見守り支えていたからだと思う。
こういう人の情のようなものも一つのテーマなのかも。

商店街が無くなっても、そこにあった不器用で人間臭い人と人との暖かさは一人ひとりの胸の中に残る。
さんそ

さんその感想・評価

3.6

このレビューはネタバレを含みます

肩こりがとれた。ほのぼのとしたいい映画。主題歌よすぎ。ただ、最後のナレーションで、映画のテーマやタイトルを言いすぎて、ちょっと覚めてしまったかな。映画と銭湯が出てきて、ゆるやかな雰囲気だし、好きな映画ではある。銭湯に行きたくなる映画。
ごっつ

ごっつの感想・評価

4.0
言葉にするのが難しいな〜っていう印象。
静かなテンポで進みセリフも少なく終始落ち着いた感じ。

再開発で新しい物、場所が出来るのは良い事かもしれないがその反面終わりが来る場所もある。そこがドキュメンタリーとして描かれてて、考えさせられるというか切なくなった。

おばあちゃんの印象的な台詞があってそれもまた安心感あって心強いと言うか背中を押してくれるような感じしたな〜

松本穂香と光石研の2人の演技がめちゃくちゃ良かった!
両親を早くに亡くし、祖母とともに続けていた民宿も畳まざるを得なくなった20歳の女の子。
父の古い友人のつてから住み込むことになった東京の銭湯での交流から、行き場もなく生きづらい世界を少しずつ取り戻す

一歩踏み出すラストはもう少しぼかして欲しかった。あれはちょっとあり得ない感じで、ややげんなり
Taul

Taulの感想・評価

3.5
『わたしは光をにぎっている』鑑賞。朴訥さの天才松本穂香を消えゆく下町文化に静かに配置する。そのもどかしい小さな話が日本が抱える問題への「覚悟」にシンクロしていくのが素晴らしい。映画を壊しかねない表現も魅力だ。リリカルさと邦画の伝統的な情緒のミックス。中川龍太郎の立ち位置は貴重だ。
個人的に刺さる設定、描写が多くて良かったです。自分の人生の一つ一つの細かい思い出とか、今まで経験したことを少しずつ思い出せるようで、終始癒やされてました。落ち着いた美しい映像作品だと思います。
はる

はるの感想・評価

4.3
松本穂香のもったりした雰囲気
変に気まずい感じとか、間がすごい長いのとか、本当に好み
随分と等身大な作品だ、と言うのが第一印象。
本作を見たきっかけは、野尻湖。関東から遠いが夏や秋がとても素晴らしい田舎リゾート地。ここから始まる松本穂香演じる澪のストーリーは、祖母の入院により共に切り盛りして来た旅館を閉じる事となり、都内の下町で銭湯を生業としている父親の友人に世話になるが、都会の生活に慣れていくうちに....、都会で暮らしている人たちのノリに付いて行けなくなる。
正直、祖母と旅館を切り盛りしていた割には内気で口数は少ないダメダメな若者にしか見えず感情移入も難しかった。
しかし、祖母の死をきっかけに覚悟を決めたかの様な決断をする。そこが準主演の光石研の台詞からも『覚悟とは他人を巻き込む事』にも表れるし、野尻湖の水に浸かり前に進む映像が即ち澪をイメージしており自己肯定をしたと思う。
その後の大感謝祭はミシェル・ゴンドリーっぽい所はご愛嬌か。それでも後半は心に響くものがあったなぁ。
本作をチョイスして映画館で鑑賞する機会は中々難しいと思うが、是非見て欲しい作品だ。
若手の俳優たちも有望だと思ったよ。
ヴレア

ヴレアの感想・評価

3.3
カネコアヤノの「光の方へ」が主題歌という理由だけで鑑賞。

物語自体はよくある話というか、リアルな人間ドラマが展開されていたのが良かった。

寂れた商店街の風景や、昭和情緒溢れる銭湯の風景がなんとも懐かしく、癒される。

しかし、それらも段々と失われつつあるという現実。

シャッターが降りたままの商店。
次々とやめていく飲食店。
劇中のドキュメンタリーという設定で描かれたそれらの光景はとても寂しさを感じさせる。

松本穂香のぼーっとした演技がとても良い。何を考えているのかわからないようでいて、段々とその優しさが理解できるようになり、最後はとても応援して見ていたように思う。
渡辺大知のキャラクターもとても良かったんだけどいつの間にかフェードアウトしてしまっていたのが勿体無い。

光に反射した湖とか、自然の情景などの映像がとても美しい作品だった。
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